ツブ高ファンタジスタ3






投稿者:ハクション・フルイ


ツブ高ファンタジスタvol3 〜ペン粒技術解説編〜【WRM】 レビュー

■自己紹介
 戦型:ペン粒前陣攻守(反転多用)
 卓球歴:10年
 戦歴:中体連団体戦…市・地区優勝 県ベスト8
    高体連個人戦…県大会出場(3・4回戦進出程度)
    オープン戦…市大会レベル優勝2回 ほか
 現在は、時間のある時に知り合いのいる中学・高校にお邪魔して学生の相手をしています。

■まえがき
 少し前のことになりますが、中学生の地区強化練習会に呼ばれまして、粒高(主にペン粒)の指導をしてきました。私程度の実力の者が指導したところで果たして役に立つのだろうか、という不安はあったものの、私を呼んで下さった方いわく、
「今、うちの地区には異質選手を教えられる指導者が非常に少なく、地区内の異質選手は大概弱い。そのため県の上位チームや県外の異質型と当たると簡単に負けてしまう。フルイ君の教え方はなかなか好評だ、是非とも選手の強化に協力してほしい」
 とのことで、人に褒められる機会の少ない私は舞い上がり、鼻の下を伸ばして練習会に参加しました。調子に乗っていたせいか少し痛い目を見ましたが、まあそれは別の話として……。
 その強化練習会にて色々と考えさせられることがあり、本DVDの購入に至った次第です。既に発売から時間が経っているので今更感はありますけれど、ペン粒選手の技術向上の一助になればと思い、レビューを投稿させていただきます。

 なお、私の活動する地区の中学校は現在、県大会出場〜県中堅レベルの学校がほとんどで、強いと言える選手は決して多くありません。今回のレビューは練習会の内容を踏まえながら書いていくので、DVDの説明以外はだいぶ人を選ぶ内容(初〜中級者のペン粒、または指導者)になると思われます。あらかじめご了承ください。

■内容
 DVDに出演している方は、新井卓将さん、シーザーさん、ぐっちぃさんの三名。指導は主に、まず卓将さんが技術を実演し、シーザーさんが挑戦、そのあと卓将さんによる修正・技術的なアドバイスが入る、という形になっており、ぐっちぃさんはあくまで裏方(練習相手)に徹しています。

 紹介されている具体的な技術の内容は、大ざっぱにまとめると以下のもの。
・カット性ブロック&ハーフ ・スライド系打法(ブロック、プッシュ)
・台上技術 ・両ハンド裏面打法 ・両ハンド裏面フリック
・おまけ(オール。本当におまけです)

 当然のことながらDVDのタイトル通り粒高をメインに扱う内容で、これらの内容が全て出来ればペン粒選手としてはまあ十分かと。基本的な打法から始め、粒での攻撃、フォアでの裏面打法など、応用技術も盛りだくさん。別に基本技術をないがしろにしているわけではなく、むしろペン粒選手における土台としての基本+ちょっとした応用となっていますので、初心者・指導者も安心です。しかしペン粒としてある程度経験のある方、粒あるいは反転による攻撃力に満足している方にとっては、物足りない内容であるかもしれません。

 また、カメラは練習相手側からの視点がメインで、リプレイ時はメイン視点を少し近づけたものと、卓将さんのみを右横から撮ったシーンが入ります。解説中のメイン視点だとちょっと距離があるためプレーが見えにくく、リプレイ時は見やすいものの時間がやや短いように感じます。こういう点にもどかしさを感じる人もいるかもしれません。まあ、こればかりは映像なので仕方がないですね。「解説はなくてもいいから卓将さんの技術をじっくり見たい!」という方はvol.1をオススメします。

■感想
 某動画共有サイトや某卓球専門誌など、少し前から卓将さんの技術には注目していましたが、こうしてDVDという形で見るともうペン粒中級者としては感動です。卓将さんの流れるような無駄の少ない動きを眺めていると、いかに自分のプレーが粗雑であるかがよくわかります。

 そしてDVDの中で紹介された技術にシーザーさんが挑むのですが、卓将さんがいくつかアドバイスをしただけで、みるみるプレーが安定していくのが傍目にもよくわかります(ヤラセか?と思ったほど)。それはフォアの裏面打法などといった特殊な技術だけでなく、ペン粒の基本であるカット性ショートも同じこと。簡単なポイントを押さえるだけでミスが減り、プレーの完成度が上がっていくので、動画内のシーザーさんも心なしか興奮気味でした。ちなみに私もポイントを押さえて実践してみましたが、今まで充分だと思っていた技術にも改善の余地があることに気づき、正直ショックを受けました。私にとってこのDVDは、プレーの精度を上げるのに役立ったものであると記しておきます。 

 あえて欲を言うならば、もう少し構成・編集に力を入れてほしかったかな、と思います。このDVDの特徴は一言で言うと、「マンツーマンの講習を撮ったもの」。シーザーさんに指導する卓将さんの姿をほぼノーカット(?)でお届けします、という形になっています。
 この形式のメリットとしては、小さなミスに対する細かいアドバイスが聞けたり、卓将さんの目のつけどころがわかったり、という点でしょうか。一回のアドバイスではわからなかった部分が、シーザーさんの実践を通して繰り返し指導されるので、一つの技術に対する理解が深まりやすいと感じました。
 デメリットは「映像に無駄がある」と感じたことです。ここはカットできるんじゃないの?という打球ミスが意外に多く、その部分を取り除けばあと二、三の技術指導を入れられたのではなかろうか、と感じました。この点を考慮しても十分価値のあるDVDではありますが、編集次第ではより良いものになったかもと個人的には思っています。まあ、贅沢な話ですが。

 ※先述したようにこのDVDはあくまで「基本技術+ちょっとした応用」の解説になります。紹介されている技術のバリエーションはvol.1の方が多いです。ですので繰り返しになりますが、「技術指導がなくてもプレーを見れば覚えられる」という方にはvol.1をオススメします。お金に余裕のある方はVol.1、Vol.3を一緒にどうぞ。
 また、ややスタイリッシュにまとまりすぎているきらいはありますが、卓将さんが出演されている某王国の粒高DVD前編は、大雑把に捉えれば本DVD「vol.3」に似ているように思います。ちなみに後編の方は、WRM内でもフリクションスペシャル2の使用で知られる小島選手も参加しており、そちらはより戦術的な内容となっています。別の商品のレビューになってしまうのであまり詳しくは書けないのですけれど、粒と裏ソフトを自在に扱える上級者が買うのであれば、某王国のこちら(後編)の方がいいかもしれません。

■補足
 イメージトレーニングの有用性をここで説くつもりはありませんが、イメージトレーニングを行う際、最も欠かすことができないものは「視覚的イメージ」です。ペン粒に強い選手が少ないのは、よりよい視覚的イメージが得られないから(参考になるペン粒選手が少ないから)であるとも言われています。漠然と「何かとりあえず強くなりたい」と思うだけでは意味がありませんし、ただがむしゃらにブロックしているだけでは、ある一定のレベルには到達できても、そこから急に伸びなくなってしまいます。だからといって、不足した技術を補うように突然ペンドラの練習を始めても、付け焼刃程度にしかならない、なんてこともしばしば……。

 このDVDは、そういう悩みを経験したことのあるペン粒にとっては垂涎ものの内容となっております。私自身、このDVDを参考にしてからというものプレーが安定してきたように感じていますし、卓将さんのプレー映像によって新たなビジョンが出来上がったことで、より大胆なプレーをすることができるようになりました。そして練習試合などでは、以前にもまして相手から嫌がられるプレーヤーに。回転の変化に惑わされ、為す術もなく方をすくめる相手を眺める、というのがペン粒選手としての快感であるということを再認識させられたDVDです。
 学生たちにアドバイスする際も「教え方がわかりやすくなった」と言ってもらえるようになったのも、大きなプラスと言っていいでしょう。

 他にはペン攻撃型の方で、「もっとプレーにバリエーションが欲しい」、「ただ攻撃するだけでは勝てないと感じている」という方にも向いているかと思います。基本的な技術も習得できる内容ですので、初めて粒高を扱う方でも大丈夫かと。ちょっと違った使い方では、「粒高選手のプレーは嫌いだ」という異質攻撃型に苦手意識を持つ方が見ることで、理解・攻略の助けになるかもしれません。興味のある方はとりあえず、WRM内にあるDVDの紹介動画や某動画共有サイトに投稿されている卓将さんの動画をご覧になってみて下さい。そこから何かインスピレーションが得られれば、このDVDは「買い」だと思います。 

■まとめ
 肩身の狭いペン粒業界のイメージを一新してくれるかもしれないDVD(なんちゃって)。
 構成や編集、撮影方法には改善の余地があるものの決して大きな欠点ではなく、「ペン粒としてプレーの精度を高めたい」という方にはむしろ嬉しい内容となっています。日頃の自分のプレーを振り返るために他人のプレーと比較する、という意味でも貴重な資料となり得るでしょう。
 また、今後普及していくであろうプラボールには、回転が掛けにくい、揺れが少ない、ラリーが続きやすくなるなどという、守備型・異質型にとって不利な特徴があると言われています。今後、守備・異質の選手は、より多彩なボールを繰り出すことを求められるでしょうね。そういう意味では、ペン粒選手がプラボール時代を生き抜くために必要な情報が、このDVDに収められていると言っても過言ではないかもしれません。
 是非、多くの悩めるペン粒プレイヤーに見てほしい。そんな風に思わせてくれるDVDでした(学生さんが手を出すには高額である、という点が残念です)。


■余談
 ところで冒頭で述べた練習会に参加した際、地区レベルのペン粒選手には、ある共通点がありました(どこでも同じ、とは限りませんが)。というか私も以前はそうでした。
 いわく、
「ペン粒に転向させられる選手は、運動神経があまり良くない」
 フットワークや攻撃の連携ができないためやむなく粒高になった、という人が大半で、中には「運動神経はいいのだけれど、こと卓球の技術になるとてんで駄目」という者も。理由は色々ありますが、中級者までの粒高ユーザーに多く見受けられるのは、「粒高が向いている」選手ではなく、「裏・表での技術に向いていないから、仕方なくペン粒をやっている」という選手のように思います。

 実際、練習会に参加していた学校の指導者たちにも尋ねて回りましたが、
「ツブはカット性ブロックとプッシュさえできればいい」
「ペン粒は立っているだけでいい」
「攻撃はプッシュのみで充分だ」
 こういう偏見を持っている方が非常に多い。卓将さんのような優れたパフォーマーが情報発信をして下さっている今でも、ペン粒に対する理解は未だ得られていないというのが現状です。
 そして上記のような消極的な理由でペン粒に転向した選手というのは、やはり攻撃力が低く、ともすればフォア軽打、粒プッシュですらぎこちないような場合があります。

 では、そういうレベルの選手がこのDVDを見ることで、多彩なプレーができるようになるか?
 そう問われると、私は素直に頷くことができません。
 実際、お邪魔している中学・高校の粒高選手たちにこのDVDを見せて意見を募りましたが、肯定的な意見が半分、もう半分は「卓将さんのようにスムーズに動く自信がない」という否定的な内容でした。もともと攻撃系の技術に長けていない選手が多く、練習メニューも守備中心、個別練習でやることといえばフォア・ミドル・バックの三点ブロックのみなどと攻撃技術に慣れ親しんでこなかったため、いまいち感触がわからないのだと思います。強豪校や、優れた指導者に恵まれた環境であればこんな悩みはないのかもしれませんが……。

 私がこのDVDを見て不満に感じたのは、上記の点です。とはいえDVDですから収録時間にも限界がありますし、まして「運動能力の向上」なんてものは人によって答えが違いますから、評価を下げる要因にはならないのですけれども。ですが、もし次回作があるのであれば、卓球のプレーではない部分の感覚・筋力トレーニングなどにも触れてもらえると嬉しいな、なんて思っています(そうなると卓球の技術DVDではなく、身体的なトレーニングの教材になってしまう気もしますが)。でなければ、自分で地道に情報収集するしかないですね。 

 ちなみに私が教える機会のある選手たちには一般的な筋トレ、走り込みの他に、体幹トレーニングを推奨しています。最近では、有名なスポーツ選手も取り入れているということで体幹トレーニングの知名度も上がり、それに伴って実用的な教本も多数出版されていますのでご存じの方も多いとは思いますが、興味のある方は是非。私の実感ではトレーニングを重ねるにつれ、生徒たちの身体のバランスが整い、ペン粒のみならずシェーク裏裏ドライブの選手やカットマンまで、全体的にプレーの精度が上がってきたように感じています。私が関わった者の中には、市大会ですらほとんど勝てなかったのに、筋力トレーニングを変えただけで今では県中堅レベル、なんて例もあります(極端な話ですが)。劇的な変化のない地味なトレーニングではありますが、ひたすら腕立て・腹筋・背筋・スクワットにばかり励んでいる方や、「自分も指導者(部活の顧問など)も運動にあまり詳しくない」という方は一度試してみてください。
 身体をいくら鍛えても変わらないという方は、こちらもかなり有名ですがティモシー・ガルウェイの「インナーゲーム」でも読んでみるといいかもしれません。だいぶ古い本(しかも内容はテニス)ですし、人によっては非科学的な内容に嫌悪感を覚えることもあるでしょうけれど、たとえば根性論に行き詰まりを感じている人には良い薬になってくれますよ。ちなみに、知り合いの中高生たちにすすめたところ非常に好評でした。続けて別の本をすすめると「むずかしすぎる」という答えが返ってきましたので、こちらは活字が苦手な方でも比較的読みやすいのではないでしょうか。

 ……何だか余談の部分が一番長くなってしまったような気がします。練習会とDVDの内容のギャップがあまりに激しかったもので、つい熱くなってしまいまして。本当は他にも色々と書いていたのですが、もはやDVDのレビューではなくなっていたので確認の段階で削除しました。それはまた、どこかの練習会にお邪魔した時にでも披露することにします。

 ここまで読んで下さった方、どうもありがとうございます。だらだらと書いてしまって申し訳ありませんでした。中・上級者の方にとってはどうでもいい内容ばかりだったとは思いますが、DVDの購入を迷っている指導者やペン粒ビギナー、あるいはこれからペン粒として卓球に親しんでいく方々にとって、多少なりとも参考になる内容であったならば幸いです。
 以上