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投稿者:ザーシー

柳承敏G-MAX(Butterfly)

◆自己紹介
・卓球歴 10年
・戦型 普段はペンドラ+粒高ですが、時々シェークも使います。

◆試打環境
・使用ラバー
テナジー05
テナジー64
テナジー80
オメガV TOUR DF
ラザントパワーグリップ
エボリューションMX-P

・比較ラケット
サイプレスJP
柳承敏MAX
蒋澎龍
尾州NO.1スーパー超特選「極」
ハッドロウJPV
ハッドロウリボルバー
吉田海偉

◆第一印象
柳承敏G-MAXは2004年のアテネオリンピック男子シングルス金メダリストである柳承敏選手モデルのペンホルダーラケットです。
アテネ優勝時は同じ韓国チームの先輩でペンドラ選手としても先輩の金擇洙選手モデルのラケットを使用していました。
その後「柳承敏」というラケットが短期間ながら発売されましたが、今回レビューする「柳承敏G-MAX」は柳承敏選手がバタフライと再契約を結んだ際にラインナップされたシリーズのラケットです。
柳承敏選手は朱世赫選手、呉尚垠選手とともに韓国三銃士と呼ばれ、韓国代表チームが若手に代替わりした現在も卓球ファンから愛され人気があります。

カットマンながらまるで攻撃型のプレースタイルのようにガンガン攻める朱世赫選手、大砲のような豪速両ハンドドライブで相手ボールを打ち返す呉尚垠選手、そして瞬足フットワークで縦横無尽に動き回りダイナミックなスイングのパワードライブで相手を撃破する柳承敏選手、三者三様それぞれの豪快な技の数々は見る者を魅了しラリー重視傾向の現在の卓球界では珍しい一発ぶち抜きスタイルのプレーは今も尚語り草となっています。

現在は少なくなったペンドライブ型(通称ペンドラ)の選手ですが、その中でも柳承敏選手のような日本式ペンホルダーを使用する選手は非常に珍しい存在となりました。
少ないペンホルダー型の中では、中国式ペンホルダーや反転式ペンホルダーの両面にラバーを貼り裏面ドライブを駆使してシェークハンドのような両ハンドでプレーする選手が最近では主流になりました。
しかし柳承敏選手は日本式ペンホルダーの片面のみにラバーを貼り強力なフォアドライブ主戦でプレーし、バック側のボールに対しては素早いフットワークからの回り込みフォアドライブや手首を切り返してのバックハンド技術で応戦していました。
ルール変更により用具やプレースタイルが目まぐるしく変化する現在の卓球界では、ここまで高いレベルの日本式ペンドラ選手は柳承敏選手以降は現れておらず非常に寂しい限りです。
ブラジルのマツモト選手など日本式ペンホルダーを使用する選手は現在も少なからずおりますが、フットワークやバックハンドのプレーに若干の違いがあり、かつては日本でも多く見られた柳承敏選手のようなペンドラスタイルはほとんど見かけなくなりました。

柳承敏G-MAXは日本式ペンホルダーラケットで、木目の揃った柾目の木曽檜単板、板厚は10mm、フェイス形状は角型、そして柳承敏選手こだわりの仕様である従来の日本式ペンラケットにはあるはずのグリップ背面のコルク板が外されているという、ペンドラには欠かせないポイントが詰まったまさにペンドラの為のラケットです。
ここからさらに柳承敏選手は表面のコルクシートを剥がし、グリップの人差し指を引っ掛ける部分にはコルクシートを数枚追加するなどの加工を施すそうです。
以前は主流でも現在では稀な存在となったペンドラ用ラケットを今回はレビューします。

◆攻撃系技術
マイルドな中にも振動が手にしっかりと伝わってくる独特な打球感はソフトともハードとも言い表しにくく、合板とも特殊素材とも違った檜単板特有の感触です。
特殊素材ラケットのようにボールは強く飛び出していきながら手に伝わる感触は軟らかめの5枚合板に近いといった独特の打球感です。
軽いフォア打ちでもボールは想像以上に飛距離が出るため慣れるまではオーバーの連続でまともなラリーにもなりません。
また下手にスイングスピードを遅くすると10mmの板厚から放たれたボールは上手くラバーに食い込まず直線的な弾道を描き、今度はネットに引っかかります。
普段から単板を使用しているプレーヤー以外はこの独特な打球感に違和感を感じ、使いこなすまでに相当な時間がかかります。

ドライブは基本打ちと同様にスイングが弱いとボールがあらぬ方向に吹っ飛んでいきます。
体全体を使った素早いスイングでボールをスイートスポットに強くインパクトさせて、ラバーにしっかりと食い込ませなければなりません。
上手く食い込ませたドライブは、強い回転がかかり山なりの弧線を描きながら勢いのあるボールが相手コートめがけて吹っ飛んでいきます。
相手コートでバウンドした後もボールは大きく伸びていき相手を大きく揺さぶることが可能です。
5枚合板や7枚合板、さらには特殊素材でもここまでのボールの伸びはなかなか出せないと思います。
ボールがラケットに当たった瞬間に吹っ飛んでいくようなイメージです。
大きくバックスイングを引いて体を大きく捻って打つパワードライブはもはやドライブなんだかスマッシュなんだかわからないほど威力のあるボールが飛び出します。
制御するのは難しいですが球威を落とさずに上手くコントロールできれば、このドライブ一発で得点することも可能だと思います。
スマッシュは木材ラケットとは思えないほど球離れが速く隣や奥の台まで吹っ飛んでいきます。
しかし相手にブロックされた場合、自分の強打の跳ね返るスピードに対してスイングの戻りが間に合わずに自滅してしまいます。
体全体を使ったスイングと同時に、強打のあとの素早い戻りもこのラケットを使う上では課題となりそうです。

◆守備系技術
ブロックは相手の強打を跳ね返したボールが弾んでしまい、相手コートに収めるのことが難しいです。
ドライブなどの強く回転のかかった相手ボールをブロックするとあらぬ方向にオーバーしていまい、スマッシュなどの直線的な弾道の相手ボールをブロックするとネットに引っ掛かってしまいます。
また軽打を誤ってブロックしてしまった場合は、浮いて相手のチャンスボールになるまでもなくネットやオーバーでミスをしてしまいます。
しかし板が厚い為、相手強打の勢いに押されにくい点は優れていると思います。
カウンターはブロックから一転して素晴らしいです。
軽いスイングでも相手の球威に負けずこちらのパワーで弾き返すことが可能です。
檜単板は板厚10mmと9mmが主流ですが1mmの違いでここまで球威に押されにくくなるとは意外でした。
その1mm代償として制御の難しさが上がるので、無難なプレーなら9mm、ピーキーな性能を求めるなら10mmがおすすめです。
ロビングやフィッシュなどの後陣でのプレーは飛距離かが出るのでやりやすいです。
しかし後陣で粘るプレーが長引くと、後々の攻めのプレーに影響が出てしまいます。
下手な防戦に徹するよりも、ブロックやロビングなどは最低限の場合に抑えてドライブやカウンターなどの攻めに転じた方がこのラケットは戦いやすいです。

◆台上
ストップは跳ねやすく、ツッツキは伸びやすいので難易度が高く感じます。
またフリックは微妙な角度の調節が難しく、少しでもズレると浮いてしまったりネットに引っ掛かってしまいます。
プッシュは弾みが強く直線的で飛び出していく弾道によって非常き強力です。
ラリーの中でのコースを突いた素早いプッシュは、それだけで得点が可能なほど強力です。

◆サーブ、レシーブ
角型のペンラケットはヘッドが回しやすく先端でボールを切りやすいので、丸型の中国式よりもスピン系のサーブが切りやすいです。
しかし回転量は出しやすいものの、やはりボールが跳ねやすいのでショートサーブのつもりが予想以上に伸びてしまい、打ち込まれてしまいます。
ショートサーブでは回転量よりも飛距離を優先し、ロングサーブでは強く切ったボールで相手の姿勢を崩すことが適していると思います。
また、自分のショートサーブからの相手のストップレシーブに対するダブルストップはペンドラは必須の技術なのでショートサーブとダブルストップはセットでの練習が必要ですが、このダブルストップも浮きやすくて難しいのが厄介です。
またレシーブはこのラケットの鬼門で最もミスが出やすい分野です。
止める系の技術はボールが浮きやすく全体を通して難しい傾向がありますが、レシーブでは3球目で打ち込まれない為にストップやツッツキはよりシビアに止めなければなりません。
また、自分のストップレシーブに対する相手のダブルストップへの対策も必要なのでいかにボールを自在に制御出来るかが重要です。
ペンドラはサーブもレシーブもストップへの対策が避けては通れない道であり、どんなに強力なドライブや強打もストップへの対策が万全でなければ成り立ちません。
ドライブの陰に隠れがちですが柳承敏選手はサーブレシーブがトップ選手の中でも抜群に上手いことでも有名でした。
柳承敏選手の豪快なパワードライブはショートサーブやダブルストップなどの地味ながら堅実なプレーによって支えられていたようです。

◆その他 
片面ペンドラはバック側のボールに対してはフットワークを使った回り込みフォアドライブで対処することが多いですが、スピード化が進んだ現在のルール下での卓球ではパックハンドでの強打も必要です。
中ペンや反転ペンの選手が裏面ドライブ駆使するならば日ペンの選手もバックドライブや、バックスマッシュなどの技術の習得が必要かと思われます。
柳承敏G-MAXでのバックハンド強打は日本式の細いグリップに背面のコルクの排除によって非常に操作性が高くやりやすいです。
またフェイス形状が角型で縦長なのでボールに力が伝わりやすいので非常に威力の高いボールを打つことが可能です。
裏面ドライブに比べて貧弱に思われがちな日ペンのバックハンド強打ですが、しっかりとラケットを振ることが出来るように練習することで裏面ドライブやシェークハンドのバック強打に匹敵する威力を出すことが可能です。

◆おすすめプレーヤー、ラケット構成
伝統的なペンドラを極めたい選手におすすめです。
形状や厚さ、グリップなど随所にペンドラとしてプレーするために必要な工夫がなされており、さすが柳承敏選手モデルのラケットだと感じました。
テナジー05やエボリューションMX-Pなどスピン系テンションの中でも割と硬めのスポンジ硬度のラバーで食い込ませた時にしっかりと回転がかかるラバーが適していると思います。
中ペンや反転ペンの裏面ドライブはシェークのバックへの対抗策として非常に強力ですが、日ペンでの回り込みフォアドライブもまだまだ捨てたもんではないと思います。
またフォアハンドパワードライブはシェークや中ペン、合板や特殊素材などのどのラケットよりも威力があると思います。
攻めのプレーを重視するプレーヤーや柳承敏選手が好きな方におすすめです。

◆まとめ
ペンホルダーの選手は現象の一途を辿り中でも日本式ペンホルダーの選手はトップや一般、ジュニアを問わず見かけなくなってきました。
しかし日本式ペンドラはまだまだ可能性がある戦型だと思います。
両ハンドプレーの中で輝くフットワークとフォアドライブの魅力が再確認できたように感じました。