投稿者:ぬりかべ
WRM社DVD「Xia論法vol3身体スピード徹底解説編」レビュー

1.ざくっとレビュー
 動けなかった選手が動けるようになる!卓球の指導者・選手以外にも見ていただきたい、トップ選手が持っている「効率の良い身体の使い方」を丁寧に解説した、全運動関係者向きDVD。

2.内容
Disc1(主に体の使い方に関する部分)
  ・はじめに
  ・講師の紹介(布袋先生)
  ・一次姿勢:正しい立ち姿勢
  ・二次姿勢:正しい歩き姿勢
  ・三次姿勢:専門種目の動作
  ・おわりに
Disc2(主に戦術的な部分)
  ・はじめに
  ・お勧めはサムソノフ選手
  ・動く卓球と動かない卓球の比較
  ・振る卓球と振らない卓球の比較
  ・システム練習は実践で使えない?
  ・おわりに
 Disk1では、「立ち方」「基本姿勢」「歩き方」「フットワーク」などについての説明がされています。それぞれに関して自分が感じたのは、「いままで学んできたこと、教えてきたことってなんやったんや!!」ということ。特に「基本姿勢」「フットワーク」に関しては、頭を殴られたぐらいの衝撃を感じました。ネタバレになるので詳しくは書きませんが、いままでに選手に教えてきた「前傾姿勢」「フットワーク」に関する指導が大間違いだったことが、DVDを見るとわかります。具体的には
 ‖の○○指に体重をかける→体の動きが不安定になるよなぁ…わざわざブレーキかけてるよ、これ
 背中は伸ばしすぎず丸めすぎず→これじゃあ体幹の力が使えないやん。手打ちになるわけやわ。
 フットワークは、反復横跳びのように→フットワーク練習で疲れるわけだよ…
などなど。具体的にはどうすればよいか、ということがDVDの中で説明されていますが、「誰にでも理解できて」「簡単に実践できる」内容なので、すぐに試すことができます。ただし、打法に関する説明は含まれておらず、「フットワーク」はフォアハンドを主体としたプレーが前提になっているように思います。打法のことなどは、今後のDVDで紹介されるのかもしれませんね。
 Disk2では、「動く・動かない」「振る・振らない」卓球の性質を「時間」や「動作」に絡めて説明した内容で、戦術・考え方に関する部分がメインになっており、ファンにとっては「The Xia論法」といった感じです。これを見ていると「ミスの本質」がよくわかるので、冒頭でXiaさんがおっしゃっていますが、練習に時間をさけない社会人プレーヤーにぜひ見ていただきたいですね。あるいは「動きに無駄が多い」「自滅する」と指摘される選手。また、このDVDを見ると「一般のプレーヤーのレベルでは、なぜ粒や表のブロックマンが勝ちやすいのか」ということがよくわかります。ブロックマンや、ブロックマンを苦手としている選手にもお勧めの内容です。

(ここからは、基本的にDisk1に関するレビューです)
3.選手の様子
 Disk1の「立ち方」「歩き方」「基本姿勢」を、チーム内の動きが鈍い選手4名を中心に教えたところ、「劇的」と言うべき変化がありました。
その4名に共通しているのが
(1)ひざを曲げてプレーできない(猫背で膝がまっすぐ)ので前後左右の動きが遅く
(2)練習時の1コースの打ち合いには強いが、試合やオールラウンドの練習に極端に弱く
(3)体から遠いところのボールは強く打ってしまってコントロールができない
という欠点があること。毎日の練習では「膝を曲げることを意識して」と指示を出しているのですが、言われた直後はきちんとひざを曲げるものの、5分もたてばすぐにひざが伸びて動けなくなる、の繰り返しでした。彼らは運動全般に苦手意識を持っているものの、たいへんまじめな選手なので、「膝を曲げられないのは意識の問題ではなく、体の使い方の感覚が身についていないからであろう」と考え、DVDの内容を教えました。
 その結果、彼らに起きた変化は
 (1)膝がスムーズに曲げられるようになって体重移動がスムーズになり
 (2)前後左右の揺さぶりに対応できるようになり
 (3)体から遠いところまで足を動かして打つため腕の力だけで打つことが減り
 (4)守備範囲が広がるとともにミスが大幅に減る
というものでした。守備範囲が広がり、ミスが減ったことで彼らの勝率は大幅に向上し、学年別の大会ですら1回戦負けの常連だった彼らは、いまや3回戦や4回戦まで勝ち進むのが当たり前になっています。彼らは、今では自発的に立ち方のチェック(横から押してもらう)や股関節のストレッチをするようになりました。
 ほかの選手たちの動きも良くなりましたが、一方でほとんど変わらなかった選手もいます。それは
  .繊璽爐離─璽后文強化指定選手)
  △い錣罎襦岷親或牲个いい」選手
です。彼らに関しては、「変わらなかった」というよりも「もともとそうしていた」と言った方が正しいかもしれません(実際、男子のエースのフットワークは、DVDで紹介されているものとかなり似ています)。なお、△謀てはまる選手のうち2名が空手経験者なのですが、「立ち方」の説明をしたときに、『空手と一緒だ…』と言っていました。空手も、長い年月をかけて効率の良い動き方を追究してきたのでしょうね。

4.指導者の視点から
 Disk1の内容は「効率の良い体の使い方」ですが、おそらく「運動神経がいい」「体の使い方がうまい」と言われている選手がほぼ無意識でできていること、あるいはトップ選手がしんどい練習で自然と体に覚えさせたことなのではないかと思います。そして、それゆえ感覚的な部分が大きく、言語による説明が十分になされていなかった部分ではないでしょうか。
 (私のように)運動が苦手な選手は、運動経験が少ないために「効率のいい体の使い方」が身についておらず、おそらく例を見せてもらっても『なぜそうなるか』がわかりません。しかし、このDisk1では「体のどの部分をどう使えばどうなるか」がわかりやすく説明されており、「運動は苦手」と言っている選手ほど効果が高いように思います。また、いままでに筋力や敏捷性などの運動能力に頼った選手がこの内容を実践すれば、安定してクオリティーの高いプレーができるようになるのではないでしょうか。
 もちろん自分でも試してみましたが、今までに『常識』と思っていたものが一気に覆されたように感じました。特に「構え方」に関しては、今までが「点」あるいは「線」で体を支えていたのが、構えを変えることで「面」で体を支えるようになった感じがあります。Disk1で立ち方を変えたはじめさんの打球音が変わるシーンがありましたが、これも姿勢の安定によるものではないでしょうか。

5.総評
このDVDを特に強くお勧めしたいのが、中学校の卓球部顧問の先生方。9.5点をつけて良い内容かと思います。現実問題として、中学生の部活動選びでは、卓球部は「ほかの部と比べて楽そうだから…」「ほかの競技より運動能力がなくても何とかなりそう」という理由で選ばれることが少なくありません。そしてその結果、「運動苦手(嫌い)」という生徒が他競技と比べて極端に多くなる傾向があり、特に足を動かすこと(=フットワーク)が不得手な生徒が多数を占め、運動での成功経験がない生徒も少なくありません。そんな彼らに「できた!」「勝てた!」という喜びを経験してもらうためにも、このDVDの内容を見て、多くの生徒に伝えていただきたいものです。もちろん、どのカテゴリーの指導者にとってもお勧めできますし、中学生ぐらいであれば十分に理解できる内容なので選手にもお勧めできます。
 また、「はじめに」でも触れていますが、ぜひ卓球以外の運動部の顧問の先生にも見ていただきたいですね。特に、バスケットボールやサッカーのように「走る」「身体接触がある」競技で「立ち方」「歩き方」が効果を発揮するように思います。

6.その他
 いままで「運動神経っては指導では鍛えようがないよなぁ」と思ってきましたが、選手が動けるようになってゆく様子を見て「動けない選手は、単に動き方を知らないだけなんだなぁ」と思うようになりました。もちろん持って生まれた筋力や俊敏性に差はあると思いますが、正しい体の使い方を学べば、その差による影響は今まで私が思っていたよりもずっと小さくできるような気がします。
 余談ですが、今年の学校行事で登山に行ったとき(今年で3年連続)、歩き方や立ち方に気を付けたところ、過去2年間は爪を痛めたり翌日に腰痛になったりしたのが、今年は軽い筋肉痛のみで済みました(^^)。卓球だけでなく、日常生活でも取り入れるべきところがたくさんありそうです。

Xia論法vol3身体スピード徹底解決編【WRM】の詳細はこちら