20190418_下川本3

















投稿者:ぬりかべ


「卓球の教え方の教科書」(下川裕平 著)レビュー

 

【1.ざくっとレビュー】

 技術ではなく「考え方」さらに言えば「勝ち方」とその指導方法を教え、「心・技・体・智」の「智」をレベルアップさせ、持っている「技・体」をより効率よく使う方法を教えてくれる、指導者向きの指導書(もちろん、選手が読んでもためになりますよ!)。

 

【2.内容】

 最初に断っておきますが、この本はいわゆる技術書ではありません。「考え方」そして「教え方」を教えてくれる、まさに「教え方の教科書」です。今までに出版された卓球の本の中にも「考え方」「戦術」を扱ったものはありますが、この本はそれとも一線を画すものです。

 

内容は

,呂犬瓩法´卓球の本質とは B邉紕S理論

ぃ海弔諒儔宗´ヂ乃經恭弌´上達ピラミッド

Xia論法コラム ┐客様の声

8章から成っています。

第1章では、大まかにいえば「指導者は、何を念頭に置いて指導しなければならないか」ということが書かれています。具体的には『考える卓球をするために必要なこと』『勝つための練習にするために必要なこと』などが詳しく書かれています。

第2章では、『卓球とはどんなスポーツか』『上達とはどんなことを言うのか』『なぜミスをするのか』『何のために動くのか』といった、卓球あるいはプレーの本質的なところが説明されています。その切り口が今までの卓球の本にはなかったものが多いのですが、読むと納得。

 第3章では、今までにDVDやブログで紹介されていた「卓球3S理論」が紹介されており、2章でふれた「卓球の本質」にどうアプローチするか、ということが詳しく書かれています。

 第4章では「3つの変化」を軸に『どう得点するか』『どう失点を防ぐか』という方法が、第2章でもふれられた『時間』を主なキーワードとして説明されています。

 第5章の内容は、技術論と戦術論のミックス、とでもいえばいいでしょうか。どんな技術をなぜ身に着ける必要があるのか、その技術を身に着けることでどんなことができるようになるのか、ということが詳しく書かれています。

第6章では、どういう手順で練習すると試合で勝てるようになるか、ということが試合に至るまでの練習の過程を、基本的に「簡単なことから徐々に難しく」と組まれた4つの段階に分けて詳しく説明されています。

 第7章は、Xia論法のブログでも紹介された「なぜ中国の卓球は強いのか」といったことから「意識と無意識」話などが、いろいろと紹介されています。中学校の指導者に嬉しい「初中級者層で勝つには」といったことも多く書かれています。

 

【3.感想】

 感想をざっくり言えば「頭の中が整理されて、ものすごくすっきりした」という感じでしょうか。今までに学んだことが「点」のように散らばっていたものが「線」にまとまり、さらにその線がまとまって「面」になったような感覚があります。そして…自分が生徒に指導してきたことの多くが、目的をはっきりさせないものだったり、試合に勝つことにつながっていなかったり、技術は教えても戦術につながっていなかったりしたものだったことがわかり、少なからずショックを受けました。ただ、これは「この内容を頭に入れて練習を組めば、同じ強度でもさらに効果が得られる」ということでもあります。自分のチームを勝たせるための方法が具体的に見えてきました。

 

自分を含め多くの指導者は、選手に対して

 (1)練習ではできる技術が、試合では全然使えない

  (2)同じような負け方を繰り返す(=考えていない)

  (3)いい打ち合いはできるけど、終盤には慣れられて勝ちきれない

  (4)その選手のレベルにあったアドバイスが難しい   等々

といった悩みを持ったことがあると思います(「勝たせたい」という思いが強いほど、悩みは多くなりますね)。この本を読むと、それらの悩みに対して「なぜ」という原因と「どうすれば」という方法が見えてきます。例えば(1)の原因は、「第2章 卓球の本質」の『ミスの「本当の原因」とは』を読むとわかり、その解決方法は「第3章 卓球3S理論」の『身体スピード』『反射スピード』と「第6章 上達ピラミッド」の『身体スピードの練習』『反射スピードの練習』を読むとよくわかります。(4)はまさに今自分が悩んでいることなのですが、「第1章 はじめに」の『コミュニケーションを阻む知識の壁』と「第4章 3つの変化・6つの要素」の『「時間」という共通認識をもとに卓球を考える』で解決できそうです。

 この本を読んであらためて思ったのは、「『できない、うまくいかない』には必ず明確な理由がある」ということです。例えば、

 ・選手が「考えられない」のは、指導者がベースとなる知識や考え方を教えていないから

 ・選手に指示がうまく伝わらないのは、共通の認識を持っていないから

 ・選手がなかなか上達しないのは、その段階にあった練習をしていないから  等々


言い換えれば、我々指導者が

 ・ベースとなる知識と考え方を持たせれば、「考える選手」に育つ

 ・共通の認識(言語)を持てば、指示が伝わる(選手間のアドバイスも増えるでしょう)

 ・上達ピラミッドを意識して練習を組めば、上達が早くなる   等々

ということでもあります。そのためにできることが、この本にはたくさん書かれています。普段からの指導に悩みを抱えている指導者ほど、この本を読むことによって選手を成長させることができるのではないでしょうか。

 

 私は普段からブログでXia論法を拝見していますが、この本を読んで今まで以上に内容が頭に入ったように思います。おそらく内容がブラッシュアップされていることに加え、本の構成がたいへん見やすくなっていることがその理由でしょう。具体的には、見開き2ページの右端の項目に対するXiaさんの結論が左端に書かれ、その間に簡潔に説明が書かれています。自分は「まず2ページの両端を読んで『問い』に対する『答え』を頭に入れてから説明を読む」ようにしていますが、こうすることで「〜なのは…だからである」ということがより理解しやすくなっているように思います。この本の内容の濃さもさることながら、読みやすさも素晴らしいものだと思います。

 

【4.どんな人にお勧めか】

 すべての卓球指導者に、自信を持ってお勧めします。特に…中学校の卓球部顧問の先生には絶対に読んでほしいですね。以前DVDのレビューにも書いたことですが、現実問題として、クラブチームを経ていない卓球部入部者の多くは「運動は苦手だけど卓球ならできそう」という理由で入部する生徒が多く、運動能力で他の運動部員に劣る生徒が大半を占め、運動での成功経験が全くない生徒も少なくありません。その反面「何とか卓球で頑張りたい」とまじめに練習する生徒が多いのですが、自信がないことに加え運動能力の問題もあり「まじめに練習しているのになかなか伸びない」という生徒も多いのが現状です。その生徒たちが「うまくなった」「勝てるようになった」となるためのヒントがこの本に(特に第7章に多いです!)たくさん詰まっているので。

 指導者向きとは書きましたが、もちろん選手の皆さんにもお勧めできます。動画や雑誌で日々卓球のことを熱心に考えている選手なら、この本を読むことで「こうすればよかったのか」「今持っている技術をちょっと工夫すると次第で勝てそうだ」というヒントが見つかるはずです。

 また、この本の内容は卓球以外のスポーツ指導者が読んでも面白い内容になっています。特に第2・4・6章は、いわゆるネットスポーツに共通した内容かと思います。Xiaさんが「新インナーゲーム」や「ベイビーステップ」を読まれたように、テニスやバレーボール、バドミントンの指導者の方にも読んでいただきたいですね。

 

【5.総評】

 この本の内容だけでも素晴らしいのですが、いままでに学んできたことの内容への理解が深まり、それらの価値まで高まってきたような気がします。

だから、この本に関しては…いつもは10点満点でレビューを書かせていただいていますが、ちょっと点数はつけられませんね…。最初は「中学校卓球部の顧問が読むには10点」と書こうと思ったのですが、「この本の価値は10点満点どころの話じゃない」というのが今の気持ちです。


 

【6.最後に】

 中学校卓球部の顧問の先生方、ぜひこの本を読んでください!公務で忙しい中でしょうが、本を読んで今までの練習にちょっとした+αを加えることで、練習効率が上がります。試合でのアドバイスのヒントもたくさん詰まっています。そして、選手の「考える力」が大幅にアップします。私たちの仕事の最大の喜びである「生徒が成長する姿」「生徒が喜ぶ姿」を見るためにもぜひ!


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