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投稿者:ぬりかべ 

0.はじめに
 私が学生のころは、今ほどにペン粒は多くなく、粒高に関する情報も決して多くありませんでした。そんな中で私が参考にしたのは、廃刊となった「TSPトピックス」「卓球レポート」などで紹介される海津富美代さんの記事と技術紹介の連続写真。同じページを100回ぐらいは読んだでしょうか。
 あれから20年以上たち、海津さんの技術が卓球王国で紹介されるだけでなく、DVDまで出るとは!おっさんペン粒プレーヤー(今は9割指導者ですが)にとって、こんなに嬉しいことはありません!

1.ざくっとレビュー
 ペン粒選手の「基本的な技術」徹底的に高めることのできる、ペン粒中〜上級者あるいは粒高への理解が深い指導者向きDVD。

2.内容
 これまでのDVDのレビューがそうでしたが、内容を具体的に書いてしまうとネタバレになってしまうため、「何をどうするか」といったことはぼかして書かせていただきます。ご承知おきください。
 そして…自分でレビューを読み返すと、あまりにも文章量が多いことに気づきました。DVDの内容がペン粒・指導者・海津さんのファンにとって本当に素晴らしい内容なので、興奮をそのまま文章氏にしたらこんな長文になってしまいました。ご容赦ください。
 収録内容は、
(1)オープニング
(2)基本姿勢とグリップ
(3)ブロックの基本と応用
(4)安定性とスピードを求めるプッシュ
(5)サービス&レシーブ
(6)粒高によるスマッシュ
(7)長短と変化による連係プレー
(8)ペン粒高選手へのレッスン
(9)レジェンド・インタビュー
の9項目です。
2-(1)
「(1)オープニング」では、DVDにおさめられている海津さんの技術のダイジェスト、海津さんの現在の使用している用具、海津さんの経歴&実績が収録されています。海津さんのファンとしては、これがけっこう嬉しいところです。
2-(2)
「(2)基本姿勢とグリップ」では、グリップと基本姿勢の注意点が説明されています。
  グリップ:ポイントは○指と□指と手首のひねり。
  基本姿勢:ひじの位置は体の…
グリップに関しては「指の使い方」「手首の使い方」が解説されています。指の使い方に関しては、ある程度ペン粒に習熟している人はすでに知っている内容かと思いますが、力んでボールを打ってしまう人やラケット角度が安定しない人は、まずここを間違えています。指導者の方には、真っ先にチェックしてもらいたいところですね。手首の使い方に関しては、自分は無意識にやっていたものの、生徒には言語化して伝えられていない部分でした。うちの新2年生の中にいる「1本目はブロックできるが、2本目は止まらない」という選手たちには、この部分を伝えることで改善できるのではないかと思います。
基本姿勢に関しては、肘の位置・ラケット位置・上体のことが解説されていますが、なかでも「肘の位置」これが極めて重要ですね。中学校の顧問の先生には、この部分を間違って伝えている人が多いように思います(実際、そんな指導を見たことがかなり多くあります)。
まずは「指」「肘の位置」この2つがきちんとできていないと、このDVDの技術はほとんど実行できません。そして、「手首」を正しく使えていないと、応用技術がなかなか身につかないように思います。
2-(3)
「(3)ブロックの基本と応用」では、ブロックに関して『基本のブロック(FH,BH)』『対スピードドライブ(BH)』『対ループドライブ(BH)』『対スマッシュ(FH,BH)』『BHブロック(短く止める)』『BHブロック(切らない)』について、一つ一つ細かく解説されています。
基本のブロックに関しては、ラケットの向き・打球する位置・スウィングの方向などが説明されており、フォアブロックとバックブロックで求めることの違いについて説明されています。このFHとBHの違いに関しては、よくわかってない選手・指導者が多いような気がします。
 『対スピードドライブ』『対ループドライブ』では、基本のブロックと、打点の位置、体の使い方をどう変えればよいか、ということが解説されています。ちょっとした違いなのですが、「速いボールは取れるけどループの処理が苦手」という選手やその逆パターンの選手は、このちょっとした違いを意識して練習することでかなり改善できることでしょう。
 『対スマッシュ』に関しては…正直なところ、私はここを間違って指導していました…。ポイントは「台との距離」と「ラケット位置」ですね。プレーヤーとしての私は「スマッシュを打たれたら、止められるどうかは運だのみ」と思っていましたが、この方法なら返球率はかなり上がりそうです。
 『BHブロック(短く止める)』を視て驚いたのは、そのバウンドの頂点の低さ。私も2バウンドブロックは使いますが、海津さんと私のブロックでは「低さ(高さ)」が全然違います。ポイントは「ラケットを動かす方向」ですね。自分は「バウンド直後を、時計の4時半あたりの位置でとらえる」ことを心掛けていましたが、短く低く止めるには「スウィングは○○○」でないといけないのがよくわかりました。物理的に考えて十分納得できます。なぜ今まで気づかなかったのでしょうか…。
 『BHブロック(切らない)』では、スウィングのフォームで「切る・切らない」がばれにくくなるようなスウィングの方法が解説されています。ポイントは「ラケットを○にスライド」。切るブロックが上手な選手ほど練習していない技術ではないかと思います。が、これを意識して使えるか使えないかで、ペン粒が最も恐れる「相手に慣れられる」ことを防ぐことができます。
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「安定性とスピードを求めるプッシュ」では、『BHプッシュ』『FHプッシュ』『BHプッシュ(短く)』『ブロックとプッシュの身体の使い方』について解説されています。
 『BHプッシュ』『FHプッシュ』では、体の使い方やラケットの動き、指の使い方が細かく解説されており、なかでも指の使い方に関しては、多くの学校で説明されていない部分かと思います。
 『BHプッシュ(短く)』では、ペン粒が嫌がる「プッシュ待ち」を防ぐための「短いプッシュ」について解説されています。「短い=遅い」であるため、この「短いプッシュ」を使わない選手が多いのですが、実はこの技術を使えるか使えないかで、「相手に慣れられる」を防ぐことができるんですよね。これを見ると「どんな相手に使えばいいか」「通常のプッシュとの違い」「ラケットの動かし方」がよくわかります。個人的には、「安定性とスピードを求めるプッシュ」のなかで一番勉強になった内容です。
 『ブロックとプッシュの身体の使い方』では、ブロックのときとプッシュのときで体だの動きをどう使い分けるか、ということが説明されています。ごく普通のことが述べられていますが、「実はブロックはいいが、プッシュミスが多い」という選手はこの使い分けができていません(かく言う私がそうです)。「ドライブを1〜2本なら止められる」という選手が次に身につけるべきは、この使い分けですね。
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 「(5)サービス&レシーブ」では、まずペン粒のサーブの組み立ての基本である『BH下サーブ』『BH横下サーブ』『BH粒ロングサーブ』『BH粒サーブ(フォア前)』『FH右横下サーブ』について、「サーブを出すときに優先すべきは何か」「なぜそのサーブを出すのか」「どんな局面で出せばよいか」ということが説明されています。
 レシーブでは、主に『バックへのロングサーブ』『ミドルへのロングサーブ』『フォアへのロングサーブ』『バック前へのショートサーブ』『フォア前へのショートサーブ』の計5種類のサーブに対するレシーブについて「体とラケットをどう使うか」「バウンドのどの時点を捉えるか」という技術的なことと「レシーブ時の優先事項は何か」「どこを狙って返球すべきか」という戦術的なことが説明されています。
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「(6)粒高によるスマッシュ」では、『FHスマッシュ(クロス)』『FHスマッシュ(ストレート)』『FHスマッシュ(Bクロス)』について解説されています。それぞれで「ラケット面の角度」「打点」「指の使い方」「打球時の意識」などが説明されており、私自身は「打球時の意識」が特に重要であると感じました。
「スマッシュは、2割○○○○る意識で打つ」
指導者の中には「裏ソフトみたいに打てば大丈夫」「ちょっとオーバーさせるつもりで打てばいい」する人も多いようですが、自然に回転のかかる裏ソフトと、自然にナックルになる粒高では打ち方が違って当然ですね。「低いボールは得意だが、高いチャンスボールはむしろピンチ」という選手は、おそらくこの意識の持ち方でスマッシュがかなり安定するでしょう(私自身がそうですが)。
2-(7)
「(7)長短と変化による連係プレー」では、ペン粒が得意とする攻撃パターン『サイドスピンブロックからのプッシュ』『ループドライブをスマッシュ』『BHプッシュからの回り込みスマッシュ(サーブからのコンビネーション含む)』に加え、失点パターンを防ぐための『Bストレート攻撃に対するFHブロック』『ランダムのブロック』が解説されています。
 攻撃パターンの3つに関しては、攻撃のつなげるための前のボールをどのように出すか、ブロックに関しては「フォアにカウンターを打たれる」「ランダムのコースにドライブを連打される」というペン粒が嫌がるパターンへの対処方法について解説されています。
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「(8)ペン粒高選手へのレッスン」では、相手の粒高対策への対処方法である『浅いループドライブへのブロック』『ナックルへのプッシュ』『ロングサーブに対するレシーブ』に加え、強い選手に勝つためには必須である『長短の揺さぶり』について解説されています。それぞれの技術に関して、上半身の使い方、腕の使い方、ラケットヘッドの使い方、ラケットの位置と打点の高さ、構える位置、ラケットの動かし方、右足の動きの使い分けなど、細かいポイントが丁寧に説明されています。
 映像を見る限り、レッスンを受けている選手はペン粒としてかなり上手な部類かと思いますが、海津さんから2つ〜3つぐらいのアドバイスを受けることで、目に見えてブロックの弾道が安定したり、プッシュの威力が上がったり、レシーブが安定したり、長短のメリハリがついたりと、劇的な変化が見られます。もともと上手な選手をこの短時間でレベルアップさせるとは、なんとも驚きです。海津さんは重要なポイントを「なぜそうするのか」という理由を添えて教えているので、選手もポイントを理解しやすいのでしょう。技術面だけでなく「教え方」の部分も参考になります。
 ペン粒の選手に指導をするうえでこの動画は大いに参考になるのですが、注意するべき点が一つ。それは、このレッスンが「上手な選手への指導」であるということ。少なくとも、1コースならドライブを2〜3本続けて返せる、プッシュなら最初の一本は入る、ぐらいの技術がなければこのレッスン動画を見ても「それ以前の問題」であり、あまり役に立たないでしょう。
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「(9)レジェンド・インタビュー」では、海津さんが卓球を始めたきっかけ、粒高ラバーを使うようになった理由、選手時代のエピソードなどが紹介されています。このあたりは卓球王国(卓球グッズ)や昔の卓球雑誌に紹介されている内容です。技術的な話はそれほどありませんが、海津さんがいかに工夫して卓球に取り組んでいたかがわかり、ペン粒でなくとも学ぶことの多いインタビューかと思います。この部分は、特に指導者の方に見ていただいて、伸び悩んでいる選手に伝えてほしいところですね。

3.選手の様子から
 このDVDを、コロナウィルスによる休校期間中から選手に貸し出したところ、DVDを視聴した3人中2人に大きな変化が出ました。
最も大きな変化は「ミスが減った」「コースの打ち分けができるようになった」のですが、その最大の要因が「前後の足の動きが良くなり、安定した打点で打てるようになった」ことにあるように思います。そのおかげで、今までは3〜4本返球するとラケット面がぶれてミスをしていたのが、ラリーが長引いても打点やラケット面がぶれないため、長いラリーでのミスが激減しました。これは「5.考察」でも触れていますが、動画が正面から撮ったものだけでなく、横から撮ったものもあるため、足の動きがわかりやすかったからかと思います。次に大きな変化は、フォア攻撃が安定して入るようになったこと。これも、ラケットのスウィングが変わったのもあるのですが、前後の足運びが良くなり、安定した打点で打てるようになったことが大きいように思います。
 その選手2名に「DVDを見てどんなことが参考になったか」をたずねると、
  ‖の動きとタイミングの取り方が参考になった
  ◆屬匹了悗卜呂鯑れればよいか」がわかり、ラケット角度がぶれたときにすぐに修正できる。
ということを述べていました(ほかにもいろいろとありますが)。DVDを見た後の部内リーグにおいて、その2名は2年生のエースを倒すという番狂わせを起こしました。なお、その2年生のエースはめっぽう粒高に強いので、勝った2名は他校の選手にかなり通用するのではないか、と期待しています。
 残念ながら大きな変化がなかった1名は、1コースのブロックやプッシュが安定せず、同じミスを何度も繰り返してしまう選手。WRMさんもおっしゃっているとおり、最低限の技術が必要なことは間違いないかと思います。

4.考察(選手、指導者として)
私はおそらく、ペン粒の指導に関しては「習熟している」と言ってよい方かと思いますが、その私が見ると、このDVDの内容は「70%は知っていて言語化できること」「15%はできるけど言語化できていなかったこと」「15%はそもそも知らなかったこと」です。そして、「知らなかった15%」もこのDVDを見ると自分の中でしっかり言語化してチェックしたり指導したりすることが可能になります。要するに「粒高の基本技術をほぼ100%言語化して説明できる」ということになり、指導の際には「言語化して説明できる」ことにより、「お手本を見せてもうまく再現できないが、言葉で説明すると理解が早い」という選手(ペン粒には多いタイプかもしれません)を存分に伸ばすことができるようになります。なぜ「言語化して説明できるようになるか」というと、海津さんの説明が丁寧であることに加え、「ポイントがすべて字幕で解説されている」からです。映像だけでは「なんとなく」しかわからないことが、字幕によって一つの理論として頭に入り、より深く理解した状態で練習・指導ができます。
次にありがたいのが、どの技術に関しても「前から見た映像」と「横から見た映像」が通常の速度とスローで紹介されているので、つい目が行きがちな手やラケットの動きだけでなく、下半身の動きがよくわかります。ペン粒は「肘から先だけの戦型」と酷評されることもありますが、実際には細かな体重移動や踏み込みの位置が重要になってくるので、この「横から見た映像」がとてもありがたいですね。2〜3本ならいいが長いラリーになると先にミスをしてしまう、という生徒はこの「横からの映像」で足の動きを徹底的に研究してもらいたいものです。
 粒高によるドライブ、裏面粒高打法などのような粒高の応用技術は紹介されていませんが、本当に素晴らしいDVDだと思います。

5.総評
 ある程度の技術や知識がないと、選手にしても指導者にしても海津さんのプレーのレベルの高さや「なぜそんなプレーができるのか」ということがあまりわからず、このDVDから得られるものはあまり多くないでしょう。しかし、技術や知識がある状態でこのDVDを見ると、海津さんのプレーのレベルの高さが理解でき、「この部分で困っていた」というような「あとちょっと」のところが解決できるようになり、得られるものはかなり大きいでしょう。とは言え、ペン粒のトップ選手である海津さんのプレーを真似するだけでも技術の向上につながります。
 それらをふまえると、ペン粒の基本技術が身についていない選手や粒高ラバーやその固有技術に対する知識が不十分な指導者にとっては7〜8点、ペン粒の基本技術が身についている選手や粒への知識が十分な指導者にとっては9〜9.5点と言うところでしょうか。
 そして、もっとお薦めなのが「海津さんのファン」ですね。私(40代半ば)と同世代のペン粒には海津さんのファンが多いと思うのですが、彼女の試合の動画はあまり残っておらず(自分もVHSのビデオ一本しか持っていませんでした)、「海津さんのプレーを見たい」と思ってもなかなか叶いませんでした。しかし、このDVDには75分も彼女のプレーがおさめられているので、「プレーを見たい」という願いが存分に叶えられます。そんな人々にとっては、もはや点数をつけられるものではないでしょう。強いて言うなら「プライスレス」です。

6.その他
 このDVDを購入された方はすでに読んでおられるとは思いますが、卓球王国の海津さんの記事を併せて読むことをお勧めします。なかでも、2020年5月号の「ペン粒座談会◆廚郎嚢發任垢諭
 また、このDVDは技術的なことがメインとなっているので、小島さんのDVDで戦術と結びつけることができれば、相乗効果はかなり大きいと思います。
 そして…個人的に私が好きなのが、「サポートページ」でのやっすんさん&がねさんの対談。マニアックでディープな会話が繰り広げられています。「そうですよね〜」と共感する部分と、「その発想はなかった」と気づかされる部分がほとんどであり、粒マニアなら大いに楽しめること間違いありません。
 このDVD単体でも大いに楽しめますが、卓球王国やほかのDVD、サポート動画を併せて見る(読む)と、楽しさが何倍にも膨らんでくれます。