
投稿者:烏賊
■EVOLUTION MX-P MAX(2.2mm) 【THIBAR】
使用ラケット:
ティモボルZLC
ファイヤーフォールAC
ローズウッドXO
【ざくっとレビュー】
攻撃選手にとっては死角が少ない高性能ハイテンションラバー。
打ってよし守ってよし、弧線が出しやすく安定性も高ければフラット打ちで弾いても良しと、しばらくは台風の目玉となろうモンスターラバー。スピン系テンションラバー使用者なら一度は使って欲しい一品。
【第一印象】
カット前重量は73g、157*150cmの一般的な攻撃ラケット用にカットして52g、参考としてティモボルZLCにEVOLUTION MX-Pとテナジー80を張ってグリップテープ二重巻で198g。
パッケージには粘着シートと書いてあった物の、新品状態では粘着ラバーと言うよりかは引っかかりが強いと感じる程度。一応ペタペタ感が無きにしも非ず、シートを張り付けると粘着のような付きかたをするので、極々少なく粘着があるのかもしれません。赤のトップシートは1Qの薄い赤とは正反対で濃い赤。スポンジも綺麗な赤では無く茶が混じったような色をしています。気泡は一瞬見ただけで滅茶苦茶荒いなと言える程。元より期待感の高かったラバーだけに、目に見える全てが期待に繋がってしまいます。
【攻撃技術全般:9点】
打つと勝手に前進回転が掛かりやすく、軽打から弧線が生きて安定感を生み少し球が走ります。
弾みは高い方なのに、この生まれやすい弧線のお蔭で軽打での安定感は抜群で、強打になっても打ち方で直線的から高い弧線まで打ち分けやすく、どんな場面でも安心して振って行けます。
硬度的には硬い部類で、スポンジも硬めであると同時にシートも少し硬めのようですが、気泡の荒いスポンジのお蔭で食い込みと弾き出しが非常に良く、それによって軽いタッチでも球持ちを感じる程です。弾みは高い方と書きましたが、この手の気泡の荒い球持ちのいいスポンジは自分である程度打ってやらないとスピードが出ない傾向にあり、このラバーでもそれは少し感じました。
ある程度食い込ませれば攻撃的な弾速になり、その上シートの性能と球持ちの良さで回転量も多いと言う、非常にバランスの取れた作りになっているようです。打球音は食い込ませるとパキンと金属音が鳴りました。
*ドライブ:9点
前述したように直線的にも打てれば弧線を活かしたループも可能で、どんな場面でもしっかり振って行く事の出来る性能。
スピードドライブでもやや弧線が出てしまう物の、完全に直線的では無いのにスピード面での不満は全くなく、回転量もしっかりあるので、三球目以降のラリーでもしっかり相手を押して行けます。
ループドライブは台の下から打ってもしっかり持ち上がって、高い弧線を描いて強烈な回転量で鋭く入るので、繋ぎで打つようなループドライブでも相手はしっかり抑え込む必要があります。
パワードライブは飛距離が出やすいとは言え弧線が活き、中陣でも少し前の位置でしっかり打てるので好印象です。スピード=スピンくらいのバランスで程よく、威力も安定感も求めるのであれば、ここまでハイレベルなラバーは中々無いと思います。
バックドライブも非常に伸びが良く、食い込みが良く球持ちがいい事が活き、薄めに擦っても球持ち感があって安定性が高く感じます。インパクトが弱い人でも伸びのいいバックドライブになるので問題は無いと思います。
バックドライブは持って弧線を出すループがやり易く、しかし手首で弾きつつかけるとスピードのあるドライブにもなり、バックハンドが得意な人であればかなりの武器になりそうです。
ドライブの点数としては高いようで少々辛口にしたのですが、その理由は前陣での飛び具合が人によっては飛びすぎと感じたり、スウィングスピードが遅い人は威力が思った程でないと感じそうだからです。球持ち感に少し癖があるので、人によってはある程度合う合わないが分かれそうですが、普通にスウィングができる人であれば威力面での不満は出にくいと思います。
*スマッシュ・角度打ち:8点
食い込みと弾きだしの良さが活きたようでスマッシュは文句なしです。
角度打ちは飛び具合と力加減さえわかれば特に問題無いように感じますが、弾き出しのいいラバーな為にぶっ飛びやすいです。台上でのフリックを角度打ち気味にやる場合も、間に合わず打点が落ちると軽くしかできず、飛びすぎてオーバーが目立ちます。インナーを含む特殊素材ラケットでは力加減や角度に少し気を使いますが、5枚合板だと球持ちが上がる関係か食い込みが抑えられるからか、前でも離れてもやり易いと言えるでしょう。
特殊素材系に張る場合は、角度打ちをするのならドライブを打つかフラットに弾いた方が扱いやすいラバーと言っていいと思います。木材合板系に張る場合なら飛距離も抑えられるので角度打ちの制御も楽になりますが、台から出る球はやはりドライブの方が安定性も威力も勝っているように感じます。
対粒の時の角度打ちならば問題無く、弧線が活きて角度打ちなのに軽くドライブを打ってるような弾道になります。プッシュ系がやり易くい威力もあるので、フラット系は得意な部類だと思います。
*カウンター:9点
球持ちの良さでカウンターのやり易さが抜群にいいです。
パチンと弾きに行っても球を持つ感触があるのですが、カウンタードライブも打った瞬間に持った感触があり、こっちは木材合板系ラケットだと変に持ちすぎてオーバーしやすい面も。
前陣では叩いた方が、少し下がった位置ならカウンタードライブで、と言うのが自分的には良かったです。
【守備技術全般:8.5点】
どちらかと言えば攻撃して攻撃して攻撃しまくった方がラバーの性能を発揮できるかなと思いはしたものの、守備的プレイをしてみると思った以上に使いやすかったです。
やはり弾き出しの良さで飛距離が、と言う面が少しありますが、ラバー自体が少し硬めな事もあって、相手の球威を少し吸収してくれるので、使い勝手自体はいい方だと思います。
*ブロック:9点
強打の威力を少し吸収して抑えてくれるので、前陣でのブロックも変に飛びすぎたりと言う事が無く使い勝手が良かったです。その為伸ばすブロックとの差も明確に現れ、球持ちの良さでコントロール性も高く、弾き出しの良さでスピード感も悪くありません。
*カット(本職では無いので点数は無し)
攻撃用ラケットなので繋ぎ程度にしかやりませんが、感覚が合うのか性質なのか、あまり浮きやすく感じず低く入る印象です。それでいてツッツキで合わせてもネットに一直線に飛ぶ程回転がかかるので、切れ味で言えばいいでしょう。
*ツッツキ:8.5点
食い込ませると勝手に回転がかかってしまう性質故に回転量はいいのですが、飛びやすさも出てしまって慣れないと気を使います。この手の気泡の荒いスポンジのラバーに共通するのか、木材合板ならいいのですが特殊素材と合わせるとツッツキが飛びやすく感じます。
ただ感触に慣れれば問題は無く、球持ちの良さのお蔭かサイドスピン系のツッツキもやり易く、低く鋭く回転量もあるので、飛び具合に慣れさえすればツッツキが武器になる印象です。
ストップが少し止めづらく感じた物の、台上2バウンド位なら問題ありません。
慣れないと浮きやすさ、飛びやすさを感じましたが、5枚合板に張りかえると簡単に2バウンド以上の短さで止められるようになりました。
【台上技術・サーブ・レシーブ全般:9点】
攻撃的にも守備的にも何とかなってしまいますが、基本的には反発力が高めで球持ちいいのを活かして攻撃的にやった方が展開は楽なイメージです。
ブチ切れのショートサービスやロングサービスで長く返させて三球目ドライブ、ストップされたのを球持ちの良さを生かして台上バックドライブやフリック、もしくは流し打ち。
相手のサーブは二球目から攻めている性能ですし、ブチ切れのツッツキやサイドスピン系のツッツキでコースをついて行く。台上やサーブレシーブが上手ければ上手い人程強烈な攻めが出来る性能です。
*台上技術:8.5点
ツッツキやストップは前述した通りです。
フリックも球持ち感に慣れれば問題無いですが、角度打ちで書いたように飛びやすさもあるので少し注意が必要。5枚合板くらいなら普通に出来ますが、フォア前やバック前の場合は台上ドライブの方がいい気もします。
チキータは球持ちがいいお蔭でやり易いのですが、球持ちの良さからか今までよりも低めに抑える気でやらないと浮いたりオーバーしやすく感じました。
台上バックドライブもちょっと調整すれば問題無いですし、これも球持ちのお蔭でやり易いです。
*サーブ:9.5点
飛ぶラバーなので短く抑えにくいかと思いきや、球持ちの良さが活きてサーブは全体的に素直な印象です。回転性能がいいとロングサービスは浮きやすかったりしがちですが、回転を掛けに行ってもスピードロングをやっても非常に満足行く物になりました。
ここでも食い込ませると前進回転がかかりやすいのが活き、その為にスピードロングが安定するようですし、横回転系ロングも斜めに食い込ませるだけでスピードもあり、しっかり曲がり、それでいて浮きやすさを感じず滑り込むように飛ぶのが素晴らしいです。
この「食い込ませるだけで回転がかかる」と言うのが同系統の性質を持つ物より食い込みがいい分顕著で、やや前進回転がついてる横、前進回転がついてない横、やや下回転がついてる横サービスの弾速と跳ね具合があまり変らず、かと思えばカーブ主体で出してみたり、ロングサーブだけでもサービスゲームを取れそうな程です。
食い込ませ方で曲がる方向が簡単に変わりますし、それこそドライブか下回転かも容易に変えられますし、ショートサービスもしっかり短く強い回転で出しやすいので、昨今使った中でもサーブの自在性は最も高いと思います。
ロングサービスを多用する場合、特殊素材系ラケットに合わせた方が食い込みやすくなり弾速や回転量のバランスが良くやり易かったです。
逆にショートサービスは5枚合板の方が短く抑えやすく回転量も非常に多く、その特性さえ掴んでいれば武器になるサーブを作れるかと思います。
とは言えどちらに張っても平均を大きく上回るサービスの出しやすさなので、色々やってみて感触がいい物を突き詰めて行けばいいでしょう。
*レシーブ:8.5点
台上処理の部分で殆ど書いてしまいましたが、単純に反発力ばっかりが出るラバーでは無いので、とにかく操作性が良くレシーブは得意分野なラバーと言ってもいいと思います。
その上回転の影響もさほど大きくは無いので強気に行けます。
【おすすめラケット】
このラバーは少なくとも攻撃型ラケットであれば相性はいいと思います。
台上での守備的な動きを考えると5枚合板や薄めの7枚合板。
食い込みがいいので木材合板系でも性能は高く発揮されそうです。
守備性能を意識して攻守のバランスを取るのであれば、王道01C辺りが丁度いいのかもしれません。
インナー仕様のラケットでも問題無く扱え、張り合わせたファイヤーフォールACでは反発力が高すぎて使いづらくなるかと思いきや、同時に回転性能も高かった為に弧線が活き更に攻撃的になりました。
このラバーの攻撃性を最大限に発揮するのであれば、インナー系、ソフト系の特殊素材系ラケットでしょう。ラバー自体の回転性能が非常に高く特殊素材に合わせても球持ちがいいため、しなりの無い反発力の高く弾きのいい物をお勧めしたいと思います。
これによってサーブの使い勝手やドライブとフラット系の威力、カウンターの威力が活き、とにかく攻めて行くスタイルにお勧めです。ただしアウターの特殊素材で最高クラスのぶっ飛びラケットの場合、弧線により飛距離が出すぎて扱い辛く感じそうです。
【どんな人におすすめか】
最低限の技術が出来るのであれば全体的にお勧め出来るラバーです。
ラバーの性質を考えれば高校生くらいでスウィング力やパワーがあればある程活かせると思いますが、軽いタッチでもそれなりにいい球が出せてしまうので、中学生くらいでも扱えてしまうでしょう。
食い込ませるタイプ、擦るタイプ、弾くタイプの3つで言えば食い込ませるタイプの方が合うとは思いますが、粘着を特殊素材系に張って擦り打ちをするタイプの人にもいいですし、打点の高ささえ確保できるのであれば弾くタイプでもいいと思います。ただ非力な人やスウィングスピードに自信が無い人だと、威力や下回転の持ち上がりが悪く感じてしまいそうな面もあります。それ以外であれば、使う人をあまり選ばないラバーと言えます。
が、ラバーの性能を引き出せるかどうかで言えば、体が出来ていて実力も中級者からくらいの方になるでしょう。スピン系テンションラバーを使って攻撃している全ての人にもお勧め出来ます。
回転性能が良く弧線が高く出るので安定性と威力を求めたいテンションラバーユーザーにもいいでしょう。特に、食い込みと球持ちの良いラバーが好きな人にお勧めします。
【総評:9点】
THIBARと言えば1Qの性能の高さに驚かされましたが、1Qとは違う部分に着目して高性能ラバーを作ったなと。1Qよりも弧線が出やすく、スピードはほぼ同じと言った所でしょうか。
とても高いバランスで攻撃性能に特化しつつも守備的要素も忘れていない、実にハイクオリティーなラバーです。真っ当なスタイルの攻撃型の中級者や上級者なら、かなりの高評価を得ることが出来るでしょう。
このラバーはフォアも良ければバックもいい、前陣でも打てれば後陣でも盛り返せる万能性もあります。人によってはフォアよりもバック、バックよりもフォアと分かれるでしょうが、スピン系ハイテンションを使ってる人であれば、どちらかでとても満足の行く事でしょう。自分としては特殊素材系でフォアに使うのなら9.5点、バックに使うのなら9〜9.5点、5枚合板ならフォア9点、バック9点と言った所でしょう。
【備考】
*試打時の反対面のラバーは常にテナジー80
*張り替え順
ティモボルZLC→ファイヤーフォールAC→ローズウッドXO
*使用接着剤
ターボフィックス
非常に気泡の荒いタイプのスポンジなので、膜を取るのが困難です。