NANO































投稿者:烏賊


NANO WRM特注 厚さ2.2 ■SWORD

使用ラケット:
ビスカリア
ティモボルZLC
ファイヤーフォールAC
キョウヒョウ寧
幻守

【ざくっとレビュー】
粘着の良さとハイテンションの良さがいい感じに出てる万能型ラバー。
硬い特殊素材に張っても球持ちが良く、一般的に上級者向けと言われる組み合わせにも関わらず初心者にも扱えてしまう安易さを持つ。

【第一印象】
見た目には粒が太いこともあって太陽PROと同系統のラバーに見えますが、太陽PROよりも柔らかく食い込みが良く、何より手で持った瞬間NANO WRM特注の方が軽いと確信できる程に。
スポンジは紫色で食い込みやすく、同メーカーのKING-PROスポンジの44度版? と感じる球持ちや食い込み方。

【攻撃技術全般:8点】
粒が太くがっしりした作りなので表面で擦りやすく、スポンジの食い込みがいいので食い込ませるとスピードがしっかり出ます。
軽いタッチでもしっかり球を持つトップシートの柔らかさと程よい微粘着さ、フラットに弾いた時の扱いやすさで粘着ハイテンションとしてはバランスが高い方だと思います。
粘着ラバーの台上の強さと、ハイテンションの打ち合いの容易さや強さがバランスよくうまい具合に発揮するので使っていて非常に面白いです。
ただ、ある程度パワーのある人になってくると、食い込ませすぎて飛びが直線的になりやすく、中陣以降では弧線を出すように擦り打ちしないと飛距離に問題が出てきます。
飛距離を出しつつ威力も重視する場合は、食い込ませつつ擦るというよりかは擦りつつ食い込ませるくらいの優先順位でやった方が良く感じました。
離れて打った時に、飛距離を考えて思い切り食い込ませてしまうタイプの人は注意が必要でしょう。
と言うか基本的には前で、でも中陣に下がってしまった時も何とかなる、と言った方が正しいと思います。

*ドライブ:8点

食い込ませてスピードドライブを打つと回転量は粘着ラバーとしては少め、とは言えハイテンションと同程度。
食い込ませるとスピード性能が良く、更に球持ちもいいからかコントロール性もよく安定感が高いです。
やや擦り気味にすると弧線が高すぎずうねる弾道のドライブが出やすく、特にビスカリアと合わせた時の弾道は粘着の回転量と特殊素材の威力がバランス良く発揮されました。
擦ってのループも弧線は高く出る物の、ハイテンションにありがちな飛距離も出やすいと言う事はなく、粘着的な高くも長くなりづらいループで使い勝手がいいです。
どちらかと言えば擦り気味のドライブの方が粘着の良さとハイテンションの良さが両立できる印象はありますが、スピードでぶち抜きに行きたい時は弾き気味でも使い勝手が良く、ここまで粘着の良さとハイテンションの良さを両立した粘着ハイテンションはWRMの取り扱いラバーの中でも個人的には1,2を争うんじゃないかなと思います。
ただ、ビスカリアよりも硬いアウター系ラケットになると回転量が犠牲になりやすいので、ドライブの威力を取るかブロックのしやすさと威力で取るかによってドライブの感想が変わってきます。
ティモボルZLCに張った場合で言うと、食い込みが良くなりすぎてドライブの打ち合いになってくると相手の球威で食い込みやすく、回転を掛けきる前に飛ぶ事が増えてきます。
それでもインパクトを弱めて振れば擦り打ちしやすいので、これまでティモボルZLCに合わせた粘着や粘着ハイテンションの中では一番軽いタッチで回転量のあるドライブが打てる組み合わせでした。

下回転の持ち上がりも非常に良く、力を抜いて上に振り上げるだけで大抵のカットは持ち上がってしまいそうです。
この時、カット打ちに必死になって力んでしまうと当たりが強くなって相手の回転の影響を受けやすくなってしまいますが、単純に力まず上に振るだけでいいのでカット打ちやツッツキ打ちを持ち上げるのが楽しくなります。
個人的にはKING-PROやMAZE-PROよりも楽に持ち上がる感覚があります。

*スマッシュ・角度打ち:8点

食い込ましさえすればハイテンション的な素直な飛びをするので、スマッシュも角度打ちも粘着ハイテンションにしては打ちやすいです。
粘着の良さもあり、ボールタッチでの細かな調整が球持ちが良くやりやすく、最近使ったラバーの中では角度打ちの感触がいい方でした。

*カウンター:8.5点

カウンターは合わせるラケットに寄りけりな面が強いのですが、カウンターとして打ちに行くのであれば、フラットに食い込ませて打ってしまえば入るお手軽さがあります。
特に角度合わせがシビアに感じる事は無く、相手の回転量に左右される感覚もそれほどなく、ある程度の打点の高さがあるなら強気に強めに弾いて行っても不思議と外す気がしません。
ただ、カウンタードライブとなると難しく、相手の球威で食い込みやすく回転を掛けきる前に飛んでしまいます。
球持ちのいい木材合板ならカウンタードライブとしては打ちやすくなりますが、カウンターブロックの球威が減ってイマイチな印象。
基本的にカウンターはフラットがド安定で、変に回転を掛けに行くと中途半端に球持ちが発揮されて相手の回転の影響を受けやすく感じます。
幻守くらいのラケットであればそこら辺の調整がしやすく、カウンタードライブで戦っていきたい場合は幻守と合わせた方がいいのかもしれません。

【守備技術全般:9点】
粒の太さのおかげで抑えが効きやすく、粘着の良さもあって台上での強さもあります。
抑えやすいのに台上での攻撃もしやすく、ここでも粘着の良さとハイテンションの良さを感じました。

*ブロック:8点

板厚のあるインナーのファイヤーフォールACの場合、ブロックでも少し球持ちを発揮して威力を吸収して短くなりやすかったのですが、少し伸ばすようにやればクリアーされました。
ビスカリアもその感覚でほとんど問題は無く、むしろ多少しなって球持ちを発揮する事で、伸ばしブロックを多用する人にはこっちの方がやりやすく感じるかもしれません。
しなりが殆どないティモボルZLCの場合は、ラケットを立ててガッツリと食い込ませて反射さえる気持ちでブロックすると、相手の球威そのままに返っていきました。
キョウヒョウ寧は上板が硬く反発力も強い事で、当てるだけと言うプレイをする分にはかなり調子よかったです。
幻守だと反発力の低さで抑えてしまうと思いきや、ハードなラケットな為か相手の球威で程よく食い込んで勝手に飛びコントロール性や安定感も不思議なほど高く、咄嗟に手を出して当てた強打でもなんか入ってしまう事が。

*カット(本職では無いので点数は無し)

粘着のつもりで擦って飛ばすとイマイチ飛距離が出ない?
ハイテンションのつもりで食い込ませてガッツリ切りに行くと程々に切れて安定感もあるように感じますが、攻撃選手が中陣以降で繋ぎ程度にやるのであれば、フラットに合わせて送り出すようにやった方が安定感はあります。

*ツッツキ:8点

軽いタッチだと食い込みにくく表面で擦りやすいので、ツッツキ程度のタッチだとガッツリ切りに行っても安定感と切れ味がいいです。
こういう部分は粘着の良さが非常に良く出ます。
ツッツキも浮やすさは特に感じず、今回合わせたラケット全てにおいて低く切れた物が出しやすく感じました。
ただ、軽く合わせに行くと回転を少し殺してしまうようで、相手の回転量をそのまま返すつもりが打たれてしまう程度に回転量が減ってしまうことも。
擦った場合は回転量がしっかりあるので、中学生くらいのツッツキのラリーをするレベルなら、この回転量の差を使って浮かせて打ちに行きやすいでしょう。

【台上技術・サーブ・レシーブ全般:8点】

サーブ以外は全体的に良好なのですが、サーブは回転を掛ける技術がしっかり無いと長くなりやすかったりする印象です。

*台上技術:9点

軽いタッチでも球を持ってくれるので、台上での攻撃性能や安定感は粘着的な良さがあります。
かと思えば小さいスウィングで弾いて打てるのであれば弾き系の技術も良く、使ってて不思議に思うほど使いやすいです。

*サーブ:7点

ちょっと食い込ませた方が回転量は多いのですが、そうすると長くなりやすいのが問題点。
ハイトスで食い込ませて長くなるのを覚悟でぶっつり切るか、どの程度薄く擦れば切れて短く飛ぶかの感覚を掴まないとミスの原因になりそうです。
一応慣れれば短くしっかり切ったサーブができますが、ちょっと他のラバーとは感覚が違うように思いました。
似た作りの太陽PROの場合は粘着が強めだったので粘着で擦って飛ばしやすかったのですが、NANO WRM特注だとサーブの軽すぎるタッチだとイマイチ引っかかりが悪いように思えます。
台上で2バウンドや3バウンド程度の切れたサーブなら程々にやりやすくはありますが、ネット際に短く落とす下回転サーブは少し出しにくいように感じてしまいました。
個人的にはロング系の変化サービスが結構使いやすく曲がりも大きかったので、多少回転量は劣る短い下回転と合わせて使う分には大きな問題は無いかなと感じます。
とは言え回転量と言う一点だけを見ると、安価なハイテンションクラスの回転量かなーと言った所です。
ここら辺は、微粘着よりも粘着量が少なく、すぐに粘着が衰えてしまう事とも関係ありそうです。

*レシーブ:9点

台上で相手のサーブをいじる事が得意なラバーです。
食い込ませない限りは飛距離が出にくいので、サイドスピン系のツッツキはもちろん、フラットにとらえつつ球の横を擦ってサイドを切らせてみたり。
バックに使ってチキータも非常にやりやすいのですが、バックに使う場合はその他技術の飛距離の問題もあるので人を選びます。
台から出てもドライブで持ち上げやすいし、その持ち上げやすさもあって二球目から攻撃しやすいです。
台上で弄る、台上バックドライブやフリックで攻撃する、台から出ればドライブで二球目から点数を取りに行ける、とブロック性能以上にレシーブ性能の高さを感じました。

【おすすめラケット】
用途によって大分変ります。
単純にブロック性能を生かすのであれば、球持ちが良すぎずしならない特殊素材入りのラケット。
ブロック性能を残しつつ攻撃性能を追及するのであればビスカリア系の少ししなる特殊素材ラケットやハード系で回転の掛けやすい幻守のようなラケットでしょう。
板厚のあるインナーもブロック性能や攻撃性能は高いのですが、個人的には自分から攻めていく分にはビスカリアが程よく使いやすかったです。
キョウヒョウ寧だとブロックの返球速度は優秀な物の、上板が硬すぎて早めの軽打ですら直線的に出てしまう事があり、硬さのバランスとしてはちょっと悪く感じてしまいました。
カウンター的なブロックを期待するのであれば、球持ちは少な目でしなりが無いor少ないラケットの方が合わせるだけで出来て楽ではありますが、他の事も考えると単純にしなりが大きくないハード系のラケットがいいように思えます。
そう言う事を考えると7枚合板の幻守というのはベストなのかなと思います。
特殊素材の良さと、特殊素材に合わせても粘着の良さがしっかり現れる組み合わせとしてはビスカリア系のALCラケット。
安定感に重きを置いてブロックとカウンタードライブを得点源にしたいのなら幻守がいいのではないでしょうか。

【どんな人におすすめか】
作りは太陽PROっぽいと言う事で硬く重い打球感を予想していましたが、子供や女性でも十分扱えてしまう食い込みの良さと全体的なバランスの良さを持っています。
なので前陣ブロックプレイやカウンタープレイを主体にしている、これからやって行きたいと思っている人ならどのレベルにでも合うと思いますし扱えると思います。
注意することとすれば、基本的にハイテンションを使っていてぶつけて打つ事しか出来ない、回転を掛けるのが苦手な人は更に回転を掛けづらく感じてしまいそうですが、フラットの威力も良好なので使い方次第でしょう。

特殊素材+粘着ハイテンションという組み合わせがしやすいラバーで、特にWRMで発売されている粘着ハイテンションの殆どを使ってきましたが、ティモボルZLCに張って使いやすいラバーはKING-PROとNANO WRM特注、水星2WRM特注の3つだけでした。
MAZE-PRO48度も使えなくは無いのですが、軽いタッチで性能を発揮させられるのはこの2枚と言ってしまってもいいと思います。
そのSWORDの2枚の中では、NANO WRM特注は軽い力で扱える点で一番だと思います。
逆にパワーがあるのであればKING-PROの方が威力のある球を出せると思っていますし、新品で粘着の強い状態限定であれば水星2WRM特注が最も軽い力で扱えましたが、少し粘着力が衰えると途端に球持ちが失せてしまうのが難点でした。
そう言った所から、特殊素材を使っていて粘着らしい球質がほしいという人にはいいラバーではないでしょうか。
ビスカリアに張った場合も、ある程度スウィングできるのなら軽いタッチでも十分使えてしまったので、ビスカリア系のラケットであるティモボルALCや旧式の張継科(ALC)にも合わせやすいと思います。

戦型的には前陣攻守、前陣ドライブ型あたりでしょうか。
下がっても擦り気味のドライブで飛距離は出せるのですが、ガッツリと食い込ませて打つと飛距離不足に陥ります。
ループ気味のドライブでドライブの引き合いを展開しつつ、前に詰めてカウンターという事なら問題ないでしょうが、中陣主体ですと少し辛いのかなと思います。
飛距離を出しつつ回転量多めの中陣ラリーをするだけなら特に問題なさそうですが、そこから盛り返す事を考えると少々しんどそうです。
台上や前陣での攻撃力は高く扱いやすく、前陣の人には使ってもらいたいラバーです。

【総評:8点】
MAZE-PRO48度が出て、粘着ハイテンションも行き着くところまで来たんじゃないかと思うほどの性能を感じましたが、今回は違う方面で同じことを感じました。
MAZE-PROは特に打ち合いの強さと威力が良かったのですが、合わせるラケットがシビアで、自分の場合はファイヤーフォールAC以外と組み合わせると柔らかすぎたり硬すぎに感じてしまいました。
その点NANO WRM特注の場合、ブロックを主体にしないのであれば、全体的にラケットの相性はいいと思います。
軽いタッチで球を持ちやすく回転を掛けやすい。でも食い込みやすくコシの強いスポンジでスピードも出しやすいと、粘着の良さとハイテンションの良さをいい感じに両立したラバーと言えるでしょう。
何より、粘着系を合わせづらいティモボルZLCでも問題無く合わせられた点には驚きました。
これは軽いタッチで発揮されるトップシートの球持ちと、食い込ませた時に板に当たり切らないで球を持つ事の出来るコシのあるスポンジのおかげのように感じます。

そんな性質を持つラバーなので、とにかく軽いタッチでも振り切ることが出来れば、どんな場面でも攻めて行ける事が出来るラバーだと思います。
持ち上げたい時は力を抜いて振り切れば食い込みが少なく球をしっかり持ってくれるし、フラットに弾いてもハイテンションのように素直に飛ぶ。
難点を言えば下がってしまった時の飛距離とサーブの回転を掛けるときの感覚くらいな物で、昨今のあんまり下がらず前で打つスタイルにはマッチしたラバーじゃないでしょうか。
攻めても守っても良しな万能型ラバーでしょう。

ただ、今回は点数のつけ方に非常に困りました。
単純に技術一つ一つを上げれば点数はやや高め、でもその点数をつけるギリギリラインと言うだけで、威力が素晴らしいとかと言うわけではありません。
前陣付近で使うことを考えた場合、そのバランスの良さや使い勝手を考えると絶賛に値するものではあるのですが、BRAKE-PRO系やKING-PROやMAZE-PROのように攻撃性能が優れてるわけでは無く、攻撃性能では全体的に少し劣ってはしまう物の、守備に回った時の事を考えれば攻守共に非常にバランスのとれたラバーだと思います。
威力で押す若者的なスタイルよりかは、技術や戦術で戦うタイプの方がこのラバーの良さを感じるのかもしれませんが、あえて言うならスピードドライブの弾速はパワーやスウィングスピードがそれほどで無くても出やすく、その一点は他の3つのラバーより安易で使いやすく威力もいいと思います。

ブロック性能が高いとバックに使いたがる人が結構いると思いますし自分もその手なのですが、このラバーは基本的にはフォア向けです。
バックに使う場合、特に当てるだけになりがちな場合は高反発なラケットに合わせても飛距離不足を感じます。
ある程度バックのインパクトが強ければ、擦ったり弾いたりメリハリのある打ち方ができるのであれば扱えるでしょうが、一般的にはフォアに使った方が扱いやすいと思います。
ただ、前陣張り付きでラリー展開するよりも前にレシーブで取ったり、相手に打たせてカウンタープレイと言うスタイルなら問題ないでしょう。

【備考】
特になし