
投稿者:働くカットマン
【レビュー対象】
TIBHAR社/Grass D.TecS/0.5mm/黒
比較対象は、フェイントロング3/超極薄(0.5mm) と No.1/0.6mm
【卓球歴等】
13年程、カットマン。
朱世赫先生と松下浩二先生を足して10で割った感じです。
【使用用具】
ラケット:ニッタク/ビオンセロ/ST
F面:バタフライ/テナジー05FX/アツ/赤
B面:TIBHAR社/Grass D.TecS/0.5mm/黒
総重量:163g
【重量】
(ラバーカット前/カット後) 31g/24g
同ラケットに貼り付けたカット後重量で比較すると、
ロング3の超極薄(0.5mm)とNo.1の0.6mmがともに23gです。
わずかにグラスの方が重いですが、個体差レベルの誤差です。
【スポンジについて】
今回発売された待望の0.5mm/0.9mmスポンジですが、TIBHARのHPによると既に発売されている1.2mm/1.6mmのスポンジとは処方が異なるとのことです。
とりあえず、粗い気泡でザラザラしています。
【粒形状、密度比較】
粒高度(高い順) グラス > No.1 = ロング3
粒密度(密集順) ロング3 > No.1 > グラス
粒直径(太い順) ロング3 > グラス > No.1
グラスの粒頭にはロング3と同じく網目があり、摩擦を確保してあります。
粒配列は横目です。
【粒硬度】
ロング3 >>>> No.1=グラス(ふにょふにょ
【打球感/弾み/球持ち】
打球感は…なんとも言えない、グラス独特のもの。
僕のボキャブラリーでは「〜に似ています」みたいなのが思いつきません…。
グラス >> No.1 ≧ ロング3 の順の弾み&球離れの早さ。
No.1とロング3はほぼ同等の低弾性。
それと比べると、グラスはやはりちょっと弾みます。
…が、1.2mmスポンジの超級弾み具合を考えれば、物凄くマイルドです。
球離れの早さは弾みと一致しており、感覚的には分かりやすいですね。
弾みが強い分、球離れが早いと感じる…という具合です。
【相手の回転から受ける影響度】
グラス>No.1≧ロング3 (影響が少ない順)
グラスの球離れの良さに起因してか、全体的に回転の影響度が少ないです。
特に弱インパクト時には影響度の少なさを感じますね。
影響度は少ないですが、それとは別に通常の粒より弾みますので、そこは注意。
強インパクト時には、どのラバーも大して変わりません。影響無し。
【ドライブ】
ペン粒プレイヤーの方に譲ります。
カットマンで、敢えてグラスでドライブを使用する機会は無いでしょう…たぶん。
全くかかりません。笑
反転していて逆を突かれた時に、咄嗟に入れられるようにしておくと、変化がついて逆に相手もイヤかも知れませんね。
【スマッシュ】
かなり揺れるナックル性のボールが、粒高にしてはかなりの速さで相手コートに刺さります。
低弾性の裏ラバー弱ぐらいの速さはあるので、反転せずともなかなかのスピードを確保できます。
また、スマッシュする分には球離れが良い感じに早いため、回転の影響も受けづらいのも好印象。
惜しむらくは、球が揺れすぎてややホップ気味になり、インパクトがちょっと弱くなってしまった時のコントロールが難しいこと。
深さを追求するのはやめて、相手のミドル方向を狙うようにするだけで大丈夫かと思います。
十分、相手にとって返球困難なボールになります。
【ブロック】
・当てるだけブロック
ものすごい回転が残ってイヤーな球になって飛んでいきます。さすが。
グラス自体の弾みもそれなりにあるため、粒高のブロックながら、スピード面でも相手を揺さぶることができます。
ただし、コントロール性能はNo.1やロング3の方が上です。
相手の回転を残した不規則な変化ボールが出るために、こちらとしても自分の出すボールの正確な軌道イメージが難しく、そこがコントロールを難しく感じさせるところ。
・強インパクトブロック
球、速いです。笑
インパクトがズレなければコントロールは十分できるため、しっかりコントロールしたいならソフトタッチよりむしろ強く当てるべき。
ブロックのコントロールは難しめですが、粒高にしては素直な球質になりやすいロング3やNo.1と比べると、相手にとっては相当打ち込みづらいボールになります。
カットと前陣ブロックを混ぜれば、かなり嫌がられるでしょう。
カット性ブロックについては、技術幅にないので省略します。
【ストップ】
止めるだけなら好感触です。
弾みがそれなりにあり、かつ回転の影響度は少ないため、扱いやすい裏ラバーのような感覚です。
かなり切れた短いサーブ相手だと、勝手に回転が残ります。
相手は困惑しますが、こちらも回転がよく分からないです。笑
【フリック/チキータ/プッシュ】
球離れが早いので、チキータ等の回転を加えるプレイはちょっとやり辛い印象。
ロング3やNo.1はその点 結構自在性がありますが、
グラスで同等にしっかりコントロールするためには、ロング3やNo.1で必要とされるインパクトよりも薄く捉える感覚とスイングスピード、あとは慣れが必要です。
プッシュは0.5mmになってもなかなかの快速です。さらに、回転が残ります。相手には相当嫌がられる球質ですね。
プッシュを台に入れるだけならコントロールは容易で、かなりやり易い部類です。
しかしコントロール性能が特長の粒高達と比べると、より精度を上げてコースを狙うには技量を要します。
やらしいナックルボールの弾道を完璧にコントロールするのは、難しいですね。
【ツッツキ】
・切るツッツキ
ロング3やNo.1ですと、「どうせ粒高のツッツキだ」と甘く見ている相手が落とす程度の切れ味は出るのですが、
グラスだと僕の技量では…そこまでの切れ味は出ませんでした。
球離れが早いため、ロング3やNo.1の感覚で振ると、回転をかけ切る前に飛んでしまいます。
スピードも出て飛びやすいので、弾みを抑えて台に収まるよう、より繊細なボールタッチが必要となります。
また、思ったよりは粒表面の摩擦力がありません。
粒高で下回転サーブを出し比べてみるとよく分かります。
そのため、ロング3やNo.1と同じだけの回転量を得るためには、さらに「薄く」捉え、かつスイングスピードを早くする必要があります。
つまり、自分からツッツキを切るには、相応に上級レベルの技量が必要だということです。
グラスでしっかり切れるのであれば、ツッツキの感覚は全国レベルかと。
・ナックルツッツキ
意識せずとも簡単にどナックルになります。ナックルに慣れていない相手なら、カモにできます。
また、回転の影響も受けづらいため、入れておくだけなら簡単です。
下回転をこちらかけるのは技量を要し、難しいのですが、横回転で変化をつけることはそれなりにできます。
切れない人でも、横要素の弾道変化でコースを突いて、相手を揺さぶることは可能です。
また、粒高にしては弾む分、スピードのあるツッツキを送れますので、その点では相手もやりにくさを感じます。
【カット】
まずグラスの真骨頂、ドライブに対して当てるだけで簡単ブチ切れカット。
相手の回転量が多ければ多いほど、自動的に回転を反転させ、切れます。
また、スポンジ厚0.5mmで弾みがマイルドになったことで、さらに自分から回転を加えることが容易になりました。
反転分の回転量 + 自分から加える回転量 = 更なるデスカット
グラス側に対して回転量のあるループを打ってくれる相手なら、カモにできるでしょう。
下から擦り上げるカットの切れ味もヤバイのですが、ループを高い打点で捉え、粒を潰しながら切り下ろすカットは、まず強打不可能です。
これが入れば、その後の攻めは前に詰めてブロックするなりカウンターするなり、持ち上げてきたところをさらに切り倒すなり、好きにできます。
そこそこの弾みがあることから、押すだけのカットもやりやすく、ブチ切れとナックルモドキを使い分けることも可能です。
しかし、乗せ打ち等の回転とスピードが両方無いボールに対して、どうしても棒球に近いカットになってしまうのは、1.2mmと変わらずでした。(もちろん私の技量に起因するところですが)
こちらもツッツキと同じく、自分から切るためには相当な技量を要します。
【サーブ】
回転量には全く期待できません。
揺れるナックルロングを出したい時や試合の流れを変えたい時のアクセントに。
【反対側のラバーへの影響】
今回スペアラケットに貼り付けて使用してみました。
スペアのフォア面は05FXのアツですが、普段使っているトクアツと同じか少し控えめぐらいの弾みになりましたので、少しだけフォアが弾むようになったのかなと思われます。
グラスのスポンジが弾むので、その影響が出ているんでしょうか。
【総評】
脅威の反転能力を活かした変化カットの威力は変わらず。
さらに、1.2mmのように弾み過ぎて使えん!ということもなく、
OXのようにコントロールし辛いし自分からは何もできない!ということもなく。
グラス0.5mmは、かなり万人受けするラバーになったと言えます。
大体のカットマンの技量レベルで考えると、
全国レベルの方 又は 都道府県大会出場レベルまでの方 にはオススメ
逆に他のラバーの方が合っているだろうと思うのは、その間
都道府県大会上位レベルから全国レベル未満までの方
全国レベルの方なら、相手の回転量と自分のインパクトから計算して、ボールの軌道及び回転量をほぼ把握し、コントロールすることが出来ると思います。
また、ツッツキやナックルに対してのカットも切ることが出来るため、グラスの持つポテンシャルを最大限に活かすことが可能だと思います。
都道府県大会出場レベルまでの方の場合、とりあえずグラスで当てて返しておけば、正確なコントロールは難しいですが回転の影響を受けにくいため、「とりあえず入れておく」ことが簡単にできます。
その上、中級者潰しの回転の残ったイヤらしいナックルが出ますから、かなり嫌われながらも勝てる試合が増えると思います。笑
逆にその中間層にとっては、もう少しコントロール性能の高い粒高を使った方が、応用性が高く、相手のタイプを問わず弱点の少ないプレイができると思います。
相手がグラスの特性を理解して対策してきた場合、
バック側へのナックル&下回転ロングとバック〜ミドル前のナックル&下回転サーブ等で棒球レシーブを誘い、3球目を狙い打つ…という様な展開で試合を組み立ててくると思われます。
ラリー中はグラス側に回転のないボールやツッツキを集め、機を伺ってのフォア〜ミドル責め。
カットマン側としては、この組み立てへの対策ができるか否かが、グラスを真に使いこなすための壁になるかと思われます。
グラスで自分から切ることができれば問題ありませんが、切ることができない人であれば、相手の行動を読んだ上で反転で対応したり、フォアで回りこんだり、プッシュ等で攻め込んだり…などで、相手の的を絞らせない立ち回りが必要です。
以上