
投稿者:かんなぎ
0.モニター環境
使用ラバー:トランスフォーマー(ブラック/1.0MM)
普段の使用用具
R:タマス製柳3枚合板
F:オメガ5アジア 1.8mm
B:トリプル・スピード内皮 1.2mm
1.ざくっとレビュー
ツルッと硬い表面にスカスカのスポンジはまるでマカロン?低反発、スピン反転の極みのようなアンチラバー。
色々仕掛けてくる対戦相手こそドツボに嵌まっていく拘束ラバー。
2.第一印象
まず某錬金術師のアル○ォンスを彷彿とさせるキャラが目につきます。
とある小さな子は絵本と勘違いしたようで、手にとってガッカリしていました。
ラバーカットが非常に大きく取ってあるのでブレードの大きなラケットでも安心して貼れそうです。
シート:新品状態から既に死んでいます。ミイラです。
よくアンチラバーの表面をツルツルだと表現しますが、トランスフォーマーはカサカサです。艶消しで少し白っぽくなってて、乾燥肌レベルではありません。
硬度はプラスチックのようにカチカチです。ITTFがラバーのルールに「2倍の長さに引っ張っても切れず、離したら元の長さへ戻る材質であること」という項目を設けていた覚えがあるのですが、クリアしてるんでしょうか。。
トップシートは非常に薄く、粒は細長く、、粒高ラバーをひっくり返した形状そのものです。
粒形状、間隔はスーパーウォールと殆ど一緒で僅かにトランスフォーマーのほうがトップシートが薄いです。
スポンジ:スポンジも特徴的です。もちろん真っ黒なのも目を引きますが、なによりもその質感です。
液状の接着剤がちゃんと塗れるので一応独立気泡スポンジのようですが、エアコンのフィルターのようにスカスカでフカフカです。
ラバーをラケットに貼り付け、シートの上から指でグッと押すと凹んだままなかなか戻ってきません。
接着力の強いもので貼り付けした場合、剥がす際にスポンジが裂けるかシートから剥離するかでKOされてしまいます。
重量:パッケージ込みでは72g、ラバー本体(184mm×177mm)が39gで100平方センチあたり11.975g。
スポンジ入り粒高と変わらない重さですね。オルプレより軽く、スキュラ已打底より重いです。
恐らく、スポンジがスカスカなので0.5MMも1.5MMもそこまで重量は変わらないのではないかと思われます。
反発力:40mmボールを150mm上方から落とした際の跳ね返りは28mm。
※あくまで参考値:スーパーアンチ?54mm、アンチスペシャル?38mm、MIRAGE?75mm
軽打:アンチだと判っていたのに。初球をストンと落としました。
飛ばない、上がらないの感想を抱く以前にボールが滑り落ちました。
あたかもボールが飛んでいってから凹んだスポンジが戻る感じは
まさにボールが死ぬという表現がピッタリです。パシッ、カシッという打球音・打球感は本当に独特で、似たラバーを挙げることすらままなりません。
3.攻撃技術全般
ドライブ系技術:5点
対上回転で自分から掛け返すことはまず不可能です。そもそも面を被せた時点でボールは相手コートに向かってくれません。
対下回転では(ドライブと言うより、乗っけ打ちですが‥)相手のボールが切れているほど反転してかなりの回転量で返っていきます。
いかにも「当てて返しました」なフォロースルーをすると、相手が予想外の伸びに詰まることもしばしば。
フラット系技術:7点
粒が倒れることがないので、安定感は粒高よりもあります。
反面、揺れるような変化は相手の回転に頼らないと全く期待できません。
またスーパーアンチのような日本製アンチとは球持ちの悪さが比ではないので、コースの打ち分けはインパクトの瞬間ですべてが決まってしまいます。
粒高よりは打ちやすく(自爆しづらく)、従来のアンチよりは打ちにくい(融通が利かない)ですね。
対ナックルや下回転に比べて、対上回転は若干スリップする感がありネットミスが目立ちました。
カウンター:6点
このラバーに於けるカウンターは最早ラケット性能で決まると言っても過言ではないでしょう。
ラバーの持ち味を活かすとすれば、チェンジアップ気味の「振ってからワンテンポ遅れてボールが来る」カウンター。
若しくは「ドライブっぽい振りのくせにカット性」のカウンター。
後者に関しては、粒高よりも自然に回転を反転させる事ができるためかなり相手から鬱陶しがられましたね。
4.守備技術全般
ブロック:8点
止まりについては文句の付けようがありません。当たればとりあえずでも返るくらいの安定感です。
アンチ粒の代替品としてリリースされてきたアンチは、打球感を近付け反転力を落とさないためにカチカチ系路線を歩んでいたので
結果として面の角度がシビアなものが多い傾向にありました。
トランスフォーマーはシートの滑りで反転力を確保しているため、極柔スポンジを組み合わせる事ができ打球の安定に繋がっています。
難点としてはトランスフォーマー単体では自分からの変化を大きくは付けられない点、
また止まる限界値が高すぎる故に、相手に待たれてしまう、相手が戻れてしまうと言う点が挙げられます。
カット:8点
抑えがかなり利きます。力んだ感じの強引なカットでもゆっくりと飛んでいきコートに収まります。
上で述べた角度の寛容さのお陰で、普段バック粒高ではなく裏ソフトを使用している私でもカットは抜群にやりやすいですね。
カットでも相手の回転に対する抵抗感が薄く、オートマチックに反転している感触です。
それでも掛かったドライブに対してならブロックに比べると縦回転の切る、切らないの変化は自分から付けていくことが可能です。
ただし自分からサイドスピンを入れるのは制御が非常に困難でした。相手の横回転を残して利用するに留めるのがベターでした。
ツッツキ:6点
自分から切ることはできません。ほぼ垂直に立てて合わせて返すだけなのでツッツキと呼んで良いものか怪しいですが。
正面衝突のような角度で合わせてもスルッと反転し上回転で返っていきます。ミスをする気配は皆無で、安定感だけはピカイチ。
相手からは「壁打ちしているような気分になる」とのこと。
5.台上技術・サービス・レシーブ
台上技術:7点
ツッツキとチキータ(台上ドライブ)以外は何でもござれですね。
もちろん単体のボールの質そのものは高くないので、如何にコースを突くかと言う点に尽きますが
インパクトの瞬間ですべてが決まるこのラバーは裏を返せば、打球する瞬間まで相手に何をするかを悟られにくい利点があります。
まるで後だしジャンケンの如く返球でき、待ちを外していけます。
間違いなく台上で先手が取り「やすい」ラバーです。
サービス:5点
世界一サービスの切れないラバーの称号を与えても良いのではないでしょうか。
低弾性でスピードを出す事も難しく、サービスは本当にただ入れるだけの選択肢しかありません。
レシーブ:8点
レシーブはほぼ無敵状態ですね。コート外へ飛んでいくと言うことがまずありません。そして回転を受け流して相手に突っ返すおまけ付きです。
されて嫌なことと言えば、月並みですが然程切れていないロングサービスでしょうか。
理由はどうしても返球が単調になってしまう点、あとは咄嗟に出されると(他のラバーの感覚で)抑えすぎてネットに掛けてしまう点。
前者は他の粒高やアンチでも言えることですが、後者を克服するにはトランスフォーマー独特の飛び方に身体をどっぷり浸けて感覚を特化させる必要がありますね。
にわかトランスフォーマー使いを脱却できるかどうかの分かれ目はここかなと感じました。
6.おすすめラケット
ラケットの相性は全く考えなくても良いかなと思います。
あまりに個性が強すぎるラバーのため逆に、どんなラケットを合わせても持ち味が出てしまう‥
ある意味ラケットを選ばないラバーですね。
反対面のラバーとの相性だけを考えてラケットを選んでいただいて問題ないでしょう。
7.どんな人におすすめか
精神力なら負けない、ズブズブの止め専守備プレイヤー。
精神力なら負けない、とにかく戦況を引っ掻き回して色んな技を駆使して戦いたい技のデパート的プレイヤー
裏ソフトから粒高に移行したいけれど、コーンと抜けるような打球感や飛び方がどうしても駄目な方。
バックカットで力んでしまってフルスイングホームランを連発してしまう方。
8.総合評価:8点
本当に独特で、毒々しいラバーです。
しかしそれでいて、打ちたい方向に面を向けて当てれば簡単に返る扱いやすさもあります。
「当てる」「弾く」「擦る」の3つの感覚が卓球に於ける主な要素ですが、そのうちの「擦る」を取り除いたラバー。
若干の制限はあるものの、覚える事が少なければ上達までの効率も良くなります。
トリッキーな特性が取り上げられ上級者専用の難しい用具に思われますが、実は初級者にも易しい面を持った1枚です。
守備技術に関してはアンチ粒の代用としてアリに感じますが、攻撃技術では見劣りする部分があります。
不規則な変化、突発的なプッシュはなかなか再現出来るものではないなと痛感もしました。
9.備考
アンチ専用クリーナー「プロアンチクリーン」
白く半透明で僅かにとろみのある液です。吹き付けると他のクリーナーよりも液を弾いている感じがします。
アンチとは言え使用しているうちに表面が汚れてきますがキレイに落とすことができます。
使用しなかった場合、水でクリーナーした場合はラバー表面に艶のある部分と艶消しの部分とが出来て斑模様になってしまいました。
通常のラバークリーナー、プロアンチクリーンを使用するとどちらも表面が、新品の艶消し状態からだんだんと満遍なく艶が出てきました。
しかし、通常のクリーナーを使った方はシートが少しザラつきボールの滑りが悪くなりました。プロアンチクリーンを使った方はスベスベ度を維持していました。
通常の裏ソフトに使用すると、確かに汚れは落ちるのですがラバー表面がヌルつき引っ掛かりが悪くなります。
アンチ以外への使い回しは厳禁です。
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