
投稿者:ザーシー
[自己紹介]
・卓球歴 約15年
・戦型 普段はペンドラ+粒高ですが、時々シェークも使います。
[レビューする商品名]
クァンタムXプロ(TIBHAR)
[使用環境]
・使用ラバー
クァンタムXプロ 赤 MAX
・使用ラケット
吉田海偉
幻守-中国式
張本智和インナーフォースALC-FL
松下浩二-ST
[はじめに]
クァンタムXプロはティバー(TIBHAR)から発売されている回転系テンションラバーです。
2020年9月の新製品として発売されたクァンタムXプロはティバー公式HPに「中級者でも上級者並みにボールを自由自在に操ることができる」との記載があり、中級者の上達を意識したコンセプトのラバーのようです。
バタフライで言うところのロゼナやアイビスと同じユーザー層へ向けたラバーだと推測されます。
近年リリースされる中級者向けラバーはスピン系テンションとして十分な性能を持ちながら、上級者向けラバーよりもリーズナブルな価格が魅力です。
クァンタムXプロの定価は5500円+税となっているので価格に対する性能のコスパが気になるところです。
またクァンタムXプロはドイツ製ですが、日本の市場を意識したラバーとのことで従来のドイツ製との違いにも注目です。
硬度47.5度のミディアムハードスポンジを搭載し、厚さは1.8mm、2.0mm、MAXの3種類です。
球持ちが良く高い弧線を描く新開発のトップシートを採用しているとのことなので、やはりグリップ力の高い日本製ラバーを意識して開発されたのだと思われます。
日本市場の中級者層をというかなり限定されたユーザー層狙うクァンタムXプロをレビューしていきます。
[攻撃技術全般(ドライブ・スマッシュなど)]
・基本打ち
47.5度のミディアムハードスポンジということでハード気味な打球感を想像していたのですが、ラバーでボールを掴んで打っている感覚をしっかりと感じることができます。
またスポンジ硬度を知らされなければ軟らかいラバーだと勘違いするほど打球感がソフトです。
中級者に47.5度のスポンジは不向きとまでは言わないものの万人受けはしないだろうと予想していましたが、トップシートとスポンジのトータルで軟らかい打球感を生み出しているので中級者でも問題なく扱えるラバーです。
またボールのコントロールが良くクロスとストレートへの打ち分けがしやすいです。
速度の緩急もつけやすく中級者にとって必須の思い通りのコースへボールを送る練習に最適なラバーだと思いました。
・ドライブ
グリップ力が高く強い回転がかかったボールを打つことが可能です。
軟らかいシートがボールをぐっと掴んで回転をかけることができるので中級者向けラバーとは思えないほど回転量の多いドライブボールを生み出すことができます。
またループドライブやカーブ、シュートにも自在に回転がかけられるので、唯一スピードがやや足りない点を除けば回転重視のプレーに十分に適した回転性能を誇るラバーだと思います。
一昔前の中級者向けラバーはそのメーカーのフラッグシップラバーと比較すると、回転性能が大きく劣る傾向がありました。
しかし近年の中級者ラバーはフラッグシップと比較すると十分に渡り合えるほどの回転性能を誇り、総合力ではフラッグシップに軍配が上がるものの、価格差以上の性能差ではなくなっているように感じます。
クァンタムXプロは球持ちの良いシートがボールを掴み強い回転をかけられるものの、弾みがやや弱いです。
球のスピードを制御することが難しい中級者向けに調整されているようで、スピードよりも回転をかける感覚を掴むことに特化していると思います。
回転もかけられてスピードも出せるディグニクス05やラザンターR48などのフラッグシップラバーと比較するとクァンタムXプロは球威で劣る部分があります。
またディグニクス09CやオメガVIIチャイナ光・影のような粘着テンション特有のスピン系テンションを上回るほど強烈な回転量のドライブは難しいです。
しかし09Cもオメガ光・影もハイレベルな回転性能と引き換えに扱いにくさもおまけで付いてくるラバーです。
クァンタムXプロは自らがコントロールできる範囲で最大限の回転を生み出すことができるので、例えフラッグシップに回転とスピードが劣っていたとしても送るコースや自在な打ち分けなどをトータルすればクァンタムXプロの方が得点率は高い結果になるかもしれません。
私個人としてはラザンターR48>クァンタムXプロ>ディグニクス09C>オメガ影>ディグニクス05>オメガ光、の順に得点率が高かったです。
また自分のイメージしたコース展開で狙ったプレーによる得点率はクァンタムXプロが最も多かったです。
コントロールがしやすいのでいつもは球一個分オーバーするような際どいコースにも果敢にドライブを打つことができます。
また同じ中級者向けラバーで比較すると回転は粘着性のアイビスに軍配が上がります。
またロゼナと比較するとクァンタムXプロの方が回転が強い印象がありますが、ロゼナはスピードもある程度出せるので、弾まないクァンタムXプロの回転がより際立ったているような印象です。
アイビスは回転特化、ロゼナは回転+スピード、クァンタムXプロは回転+自在なコントロール、といった棲み分けができると感じました。
・スマッシュ
ボールを掴んでから硬いスポンジで弾くような打球感のスマッシュを打つことが可能です。
47.5度という硬さのラバーのスマッシュとしてはやや球持ちが良すぎて弾く感覚が足りないと感じる方もいらっしゃるかと思いますが、初めから軟らかいラバーでのスマッシュを想定していれば違和感のない弾道と打球感だと思います。
スピードが速くボールの威力で圧倒するスマッシュというよりは、やや速いスピードで狙ったコースを確実に突くスマッシュというイメージです。
クァンタムXプロのドライブとスマッシュの両方に共通するのは回転やスピードのような球威に直結する性能では上級者向けラバーには及ばないかもしれません。
しかしコースを確実に狙えるコントロール性能の高さはクァンタムXプロの大きなメリットです。
中級者同士の試合では多少威力は劣っても狙ったコースを突くことで得点できる場面は多く、人によっては得点率が上がる場合もあります。
フラッグシップラバーの強烈な一球を何本も何本も狙って打つことが可能な上級者にはクァンタムXプロはもの足りないラバーだと思いますが、自分のコントロールできる範囲で最大限の威力を発揮したい中級者にはクァンタムXプロは最適なラバーだと思います。
[守備技術全般(ブロック・ツッツキ・カットなど)]
・ブロック
あまり弾みが強くないので相手の強打の威力を十分に抑えることができます。
まだブロックが安定しない中級者の方には、ブロックを相手コートへ確実に返球する感覚を習得するのに適したラバーだと思います。
しかしトップシートのグリップ力が高いので、思っている以上に相手の回転の影響を受けてしまい当てるだけのブロックではミスを重ねてしまうかもしれません。
またペン粒を想定した守備のプレーでは、弾みが弱く回転がかかるのでカット性ブロックが好印象でした。
クァンタムXプロでのカットボールと粒との組み合わせで相手のミスを誘発させることができるので、前陣攻守のペン粒には適したラバーだと思います。
・ツッツキ
シートのグリップ力が強いので回転量の多い下回転をかけることが可能です。
中級者向けラバーではツッツキの切りやすさは最重要ポイントの1つであると個人的には考えているのですが、クァンタムXプロは安定したツッツキを打ち出すことができるので中級者向けラバーとして非常に優れていると思います。
とくに下回転の強弱がつけやすく、ツッツキ対ツッツキの場面で緩急をつけることで相手のミスを誘うワンランク上を目指すプレーが可能です。
・カット
強い回転がかかりスピン系テンションの中では弾みもあまり強くはないので、切れたカットボールを打つことは可能です。
またコントロールがしやすく狙ったコースにカットボールを送ることも可能です。
しかしカット用ラバーではないので、中級者のカットマンの方にはボールが弾みすぎて制御は難しいと思います。
上級者でカットと攻撃を織り混ぜるオフェンシブなカットマンの方にはクァンタムXプロも有力な選択肢になると思いますが、中級者のカットマンの方には粘着性のアイビスやタキネスシリーズなどが無難な選択肢になると思います。
[サーブ・レシーブ・台上技術]
・サーブ
サーブの回転のかけやすさは抜群で回転をかける感覚を習得したい中級者にはもちろん、難しいモーションからのテクニカルなサーブに挑戦する上級者の方にも使って頂きたいです。
サーブの練習の時だけクァンタムXプロを貼ったラケットで使用するのもアリじゃないかと思うほどサーブが切りやすくコースへのコントロールや前後の調整もやりやすいです。
サーブから相手を崩し威力で押すのではなくコースを突いて得点するパターンがクァンタムXプロの最も適した得点パターンだと思います。
・レシーブ
弾みがあまり強くないのでレシーブのコントロールが上手くいかない中級者の方のレシーブ習得にも適したラバーだと思います。
上級者でもレシーブが最も苦手という方は多く、相手のサーブを見極めて素早く対応する感覚は一朝一夕では得ることはできません。
クァンタムXプロのコントロール性能の高さは、相手の切れたサーブや勢いのあるロングサーブに対しても安定した返球を生み出すことが可能です。
グリップ力の強いトップシートが相手のサーブの回転の影響をモロに受けてしまいますが、ツッツキやチキータなどのスピン系のレシーブでは強い回転を作り出すことができるので、多彩なサーブの回転に対するレシーブの感覚を養うにはクァンタムXプロは最適なラバーだと思います。
・台上技術
球持ちが良くコントロール性能が高いのでオーバーやネットを恐れず丁寧な台上処理に取り組むことができます。
ツッツキ対ツッツキ、回転重視のチキータ、ペンのバックプッシュなど、安定感にプラスして緩急をつける感覚を習得することもできるラバーだと思います。
[おすすめな方]
中級者の方でスピン系テンションを初めて使用する方や、上級者との対戦が増えてきた中級者の方におすすめです。
球持ちが良く回転もかかり、コントロール性能も高いです。
中級者が上級者へランクアップする際に必要な技術の感覚を養い、習得するのに最適な性能を誇ります。
クァンタムXプロで技術を習得して上級者向けラバーへステップアップするのも良いと思います。
[まとめ]
単なる中級者ラバーではなく上達を助けるラバーとしてクァンタムXプロは開発されていると個人的には感じました。
技術の習得に適したラバーを開発するTIBHARの中級者に対する熱意のようなものを感じました。