
投稿者:ザーシー
[自己紹介]
・卓球歴 約15年
・戦型 普段はペンドラ+粒高ですが、時々シェークも使います。
[レビューする商品名]
ブルーグリップC1(DONIC)
[使用環境]
・使用ラバー
ブルーグリップC1 赤 MAX
・使用ラケット
吉田海偉
幻守-中国式
J.O.ワルドナーOFF-ST
ワルドナーセンゾーカーボンJOshape
張本智和インナーフォースALC-FL
松下浩二-ST
[はじめに]
ブルーグリップC1はDONIC(ドニック)から発売されている粘着テンション裏ソフトラバーです。
DONICの日本版公式サイトにブルーグリップC1の記載がない為(2020.11.19現在)「卓球ショップiruiru」さんのページ内の「粘着テンション裏ソフト」という表記を引用させて頂きました。
DONICには強粘着テンションのブルーグリップV1、微粘着テンションのブルーグリップR1(共にスポンジ硬度50°)が2019年に発売されていたのですが、それに続く形でブルーグリップC1とブルーグリップC2が2020年11月に発売されました。
DONICと言えばドイツメーカーの中でもブルーストームシリーズなどの弾みの強いラバーをリリースするイメージが個人的には強かったのですが、この短いスパンで粘着性ラバーを続々とリリースしていることに少し驚いています。
また現役トップランカーであり契約選手としてメーカーの顔を努めていたオフチャロフ選手がDONICからバタフライへ移籍した為、メーカーとして大きな転機を迎えているのかと想像しています。
今回レビューするブルーグリップC1は硬度60°で気泡の大きいブルースピードスポンジを採用しています。
また最高の回転性能とボールを掴むグリップ力を強粘着トップシートを組み合わせているとのことで、回転力に対して並々ならぬDONICの自信を感じさせます。
また同時発売の別バリエーションであるブルーグリップC2には硬度55°のスピードブルースポンジを採用しており、C1、C2がV1、R1よりもハードなスポンジによる回転性能の向上を意識していると思われます。
数年前までは、同時期に発売された他メーカーのラバーと比較すると一際ぶっ飛び感が目立っていたDONICラバーですが、かつてないほど回転性能を推しているブルーグリップC1への期待に胸を膨らませて試打をしてきました。
[攻撃技術全般(ドライブ・スマッシュなど)]
・基本打ち
シートのグリップ力が強くボールをぐっと掴む感覚があります。
強粘着シートとのことで表面にややペタペタ感はあるものの、キョウヒョウなど中国製粘着ラバーのベタベタ感には及びません。
しかし表面のぺタつき具合からは想像できないほどボールを引っ掛ける力が強いです。
これまで打ってきたどのDONICラバーよりもグリップ力が強いのはもちろん、現在発売されている粘着性テンションと比較しても同等かそれ以上のグリップ力を誇ります。
また硬度60°というお世辞にも使いやすいとは言えないハードスポンジを搭載しており、ガチガチに硬いだろうと身構えていたのですが、実際に打つとそれほど打ちにくさは感じませんでした。
硬いことには硬いのでハードな打球感が苦手な方には適さないかもしれませんが、ハードスポンジに慣れた粘着ユーザーにとっては扱える範疇を越えるほどではないようです。
またフラットに当てるとキンキンと高い音を鳴らしながらボールが直線的に勢いよく飛びます。
ハードスポンジがボールを強く弾くことで速度のあるボールを生み出しています。
スピン系テンションとボールの初速を比較すると粘着性はどうしても劣ってしまいますが、その弾みの弱さをハードスポンジで弾くことで補っているようです。
またハードスポンジとやや厚みのある粘着性シートを組み合わせたことで総重量がかなり重くなり、スイングの振り抜きはあまりよくないです。
普段から重い粘着性ラバーでプレーしている方でなければ試合が長引けば長引くほど苦しくなると思われます。
200g近い重たいラケットでラリーを何本も続けられるスイング力がある方でないと使いこなすのは難しいかもしれません。
ブルーグリップC1は硬さに慣れてボールが掴めるようになると、重さがネックになるラバーだと思いました。
・ドライブ
グリップ力の強い粘着性シートを採用しているので強烈に回転がかかったドライブを打つことができます。
これまで何度もDONICのラバーを打つ機会がありましたが、ここまで回転をかけることが出来て威力のあるドライブを何発も打ち込めるラバーはブルーグリップC1が初めてです。
ディグニクス09CやラザンターR48とも互角以上にドライブの引き合いが可能なほどグリップ力が強いです。
また打点を落として上方向に擦り上げることでボールが高い弧線を描き、バウンド後は変則的な弾道で台の外へ抜けていくループドライブを打つことが可能です。
バックドライブではラバー自体が硬く強くインパクトして食い込ませることがフォアよりも難しいですが、放たれたボールの回転量は凄まじくバックへの深いツッツキも難なく持ち上げることが可能です。
しかしこのグリップ力の強さとラバーの硬さは恐らくフォアで力強くインパクトすることを意識して開発されていると思うのでやはりフォアドライブをガンガン打ち込む方に適したラバーだと思います。
また弱くインパクトした場合、浅いボールにはなるものの真下にボトッと落ちることはありません。
シートの引っ掛かりを強化したことにより多少の擦り具合でもやや上方向ににボールが飛ぶようになっています。
過去にリリースされたブルーファイアJP01ターボやアクーダブルーP1ターボはインパクトが弱いとボールが下方向に落ちる傾向がありました。
その部分が改善され、弱いインパクト時のフォローも可能になったブルーグリップC1は扱いやすさが向上していると感じました。
しかし粘着性+ハードスポンジの組み合わせであることに変わりはないので、ある程度のスイングスピードとインパクトの強さがないと決定打に繋げることは難しいと思います。
昨今リリースされた粘着性テンションを大きく分けると、
(1)従来のスピン系テンションのトップシートに粘着性を加えて回転性能を強化したラバー(スピン系テンション+粘着)※ディグニクス09C、ラクザZなど
(2)中国製粘着ラバーなどの純粋な粘着ラバーのシートにテンションをかけて、気泡の大きいスポンジを組み合わせることにより弾みを強化したラバー(粘着性+テンション)キョウヒョウネオ3ターボブルー、オメガVIIチャイナ影
の2種類に分けられると個人的に考えているのですが、ブルーグリップC1はドイツ製でありながら(2)(粘着性+テンション)のような打球感や回転のかけ具合を感じました。
特に超ハードスポンジ+粘着テンションといえば、XIOMのオメガVIIチャイナ影(硬度60°)が先駆けて発売されています。
使いこなせれば格上相手に下克上も可能なほど強力なクセ球が打てる反面、上級者でも手を焼くほどの使いにくさが難点のラバーです。
ブルーグリップC1はオメガVIIチャイナ影にコンセプト的にも凄く近く、性能も似ているので確実に意識して開発されていると思いました。
どちらも使う人を選ぶラバーですがシートの掴む感覚やスポンジの食い込み具合からブルーグリップC1の方がオメガVIIチャイナ影よりも若干扱いやすく感じました。
逆にオメガVIIチャイナ影は使いこなせている方を私の周辺では見かけないのですが、手懐ければ最上級の武器になる素質を持ったラバーだと思います。
オメガVIIチャイナ影よりも若干扱いやすくて中国製粘着ラバーのようなクセのあるドライブが打てるラバーを求めるドライブマンにはブルーグリップC1はおすすめの一枚だと思います。
・スマッシュ
スポンジの硬さを活かして速度のあるスマッシュを打ち込むことが可能です。
DONICのブルーシリーズの特徴の1つだった一瞬掴んでから直線的な弾道で素早く突き刺さるスマッシュはブルーグリップC1でも健在でした。
グリップ力の強いシートがボールを弾く寸前に一瞬ぐいっと掴む感覚があるので、ラバーの硬さで弾くばかりでなく自分の力で打ち込む感覚も兼ね備えています。
粘着性テンションラバーはスマッシュ時のボールを弾く感覚と掴む感覚が各ラバーによって千差万別で、好みが別れる部分だと感じていますが、ブルーグリップC1は掴みは一瞬で素早く弾く印象が強いです。
しかし掴む感覚がしっかりと感じられるのでスイングのパワーをボールに上手く伝えることが可能です。
擦ればDONIC史上最高レベルの回転性能を引き出し、当てればDONICテンションの伝家の宝刀である突き刺す強打を打ち込めるので、非常に攻撃に特化したラバーだと思いました。
[守備技術全般(ブロック・ツッツキ・カットなど)]
・ブロック
相手の強打をぐっと掴んで跳ね返すような感覚のブロックになります。
ブルーストームシリーズやブルーファイアシリーズはブロックした際にかなり直線的な返球になってしまい、そのまま勢いよくネットへ引っかけてしまう傾向がありましたが、粘着性シートを搭載したブルーグリップC1はボールを掴むことで安定した弾道で返球することが可能です。
ブルーグリップC1は粘着性によりグリップ力が向上した分、過去のどのブルーシリーズのラバーよりも相手の回転の影響をモロに喰らってしまいます。
当てるだけのブロックで回転を大きく見誤った際のリスクは増加してしまいましたが、サイドスピンブロックや面を被せ気味に打球して上回転を加えるプッシュ性ブロック、上下に切り下ろすカット性ブロックの回転のかけやすさと回転量は大きく向上したように感じました。
・ツッツキ
ボールの下部分を軽く擦るだけで強く切れたツッツキを打つことが可能です。
ブルーシリーズのツッツキでの鋭い角度はそのままに、回転量をさらに向上させることでカット対ツッツキの場面でも強気でラリーに臨むことができます。
また深さや左右のコントロールは09Cに軍配が上がりますが、中国製粘着ラバーのような回転量と相手の下回転に対する強さはブルーグリップの方が優れていると思います。
過去のブルーシリーズと比較して、粘着性ラバーによる回転量の多いツッツキが武器の1つとして加わったことで戦術の幅も大きく広がったと感じました。
・カット
グリップ力が強い粘着性シートにより強く切れたカットボールを量産することが可能です。
相手の回転量の多いループドライブに対してもぐっと掴んで回転をかけることが可能なので粘着性テンションドライブマンとの回転量勝負でも臆することなく臨むことが可能です。
左右のコントロールや深い浅いの調整は09Cの方がやりやすかったですが、回転量の多さとドライブ強打に対する粘り強さはブルーグリップC1が一枚上だと感じました。
ブルーグリップC1は中国製粘着ラバーに近い性能を持っているので、キョウヒョウなどにグルーを塗っていたカットマンの方には当時と近い感覚でカットを打つことができると思います。
オメガVIIチャイナ影もグルーを塗った中国製粘着ラバーでのカットに近い感覚がありましたが放たれたボールにクセが出るのでそのクセを求める方にはオメガVIIチャイナ影がおすすめです。
そこまでクセ球カットを求めず、粘着性の回転量の多いカットが欲しい方にはブルーグリップC1の方がおすすめです。
しかしラバーの厚さが2.0とMAXのみとなっているので、1.8mmや1.5mmの厚さを求める方には弾みすぎてしまうかもしれません。
[サーブ・レシーブ・台上技術]
・サーブ
粘着性に近い性能で多彩な回転を作ることが可能です。
軽く擦るだけで切れたサーブを生み出せる為、粘着性テンションの中でもサーブの回転のかけやすさはかなり上位に位置すると思います。
スピン系テンションや微年着テンションではもの足りない方や、中国製粘着ラバーの回転量の多いサーブによるサービスエースでの得点を求める方にはぜひ使っていただきたいです。
硬いスポンジと粘着性シートによる切れたサーブはノングループラボール時代になってもその威力は健在だと改めて感じさせられました。
・レシーブ
相手のサーブの回転の影響をモロに喰らってしまう為、レシーブは最重要課題の1つだと思います。
回転性能を向上させたが故にフラットに当ててしまうとあらぬ方向へのレシーブミスに繋がってしまいます。
チキータやツッツキ、ペンのプッシュ性レシーブなど回転を加えたレシーブであれば返球率も上がりますが、相手のサーブへの対応がシビアになったことに変わりはないので、こちらの回転をかけ返すくらいの勢いでレシーブに臨むことが必要だと感じました。
・台上技術
チキータは回転がかかるものの、ディグニクス80や64のような打ちやすさと食い込みの良さはありません。
スポンジが硬いので擦り上げる際に弾いてしまわないように気を付けなくてはならないのもやや難点だと感じました。
ペンのバックプッシュはこれまでのブルーシリーズよりも掴む感覚が向上しているので、前後のスイングの勢いをボールに上手く伝えやすくなり威力が向上しているように感じました。
[おすすめな方]
粘着性テンションの中でもキョウヒョウなどのより中国製粘着ラバーに近い感覚のラバーを探している方におすすめです。
ドイツ製ラバーですが粘着性トップシートと60°のハードスポンジを組み合わせることにより、中国ラバーの硬い粘着の打球感を再現しています。
またオメガVIIチャイナ影にもう少し使いやすさを加えたラバーを探している方にもおすすめです。
クセはオメガ影の方が強いですが、万人受けするラバーではないのでまずはブルーグリップC1を試して頂くことをおすすめします。
どちらも使いこなすのに慣れが必要なラバーですが、比較的抵抗なく使い始められるのはブルーグリップC1だと思います。
[まとめ]
粘着テンションが市場のトレンドとなり各メーカーから数枚ほど出揃ってくると生き残れるのは他にはない個性を持ったラバーです。
ブルーグリップC1は過去のブルーシリーズは勿論、他メーカーの粘着テンションと比較しても個性的な性能をもっている為、初めのとっつきにくさを慣れで克服すれば他のユーザーにプレーで差をつけることも可能だと思います。