
投稿者:ザーシー
[自己紹介]
・卓球歴 約15年
・戦型 普段はペンドラ+粒高ですが、時々シェークも使います。
[レビューする商品名]
伊藤美誠カーボン-ST(ニッタク)
[使用環境]
・使用ラバー
デイグニクス05
ディグニクス09C
アイビス
ラザンターR48
ブルーグリップC1
インパーシャルXB
インパーシャルXS
Grass D.tecS
[はじめに]
伊藤美誠カーボンはニッタクから発売されているアウター特殊素材ラケットです。
女子日本代表の伊藤美誠選手がプロデュースした伊藤美誠カーボンは、伊藤選手が永年使用して数々のタイトルを獲得しているアコースティックカーボンがベースになっています。
アコースティックカーボンはニッタク独自の弦楽器製造技術を採用した弦楽器シリーズに数えられるラケットです。
硬さのバラつきがなく広いスイートエリア、芯のある打球感、繊細なボールタッチ、木材本来の打球感、というメリットがあるようです(ニッタク公式HP参照)
そんな弦楽器シリーズのアコースティックにFEカーボンをアウター配置に搭載してより攻撃力を強化したラケットがアコースティックカーボンです。
そのアコースティックカーボンをベースに、伊藤選手こだわりのパープル地にホワイトラインをあしらったグリップデザインは、しなやかで女性らしい印象を与えてくれます。
黒地にオレンジラインのアコースティックのグリップが力強く迫力のあるデザインなので、伊藤美誠カーボンのグリップはレディースの方や落ち着いた色使いのグリップを好む方に適したデザインだと思います。
またブレード面にはサービスを打つ際の伊藤選手のシルエットと直筆のサインが印刷されており、より伊藤選手モデルとしての満足感が大きいデザインです。
ブレードサイズは157×150mmで板厚は5.5mm、重量は90g前後とやや重めです(私の所有する伊藤美誠カーボンは91gでした。)
伊藤選手の20歳の誕生日に発売されたというこだわりと伊藤選手へのリスペクトが詰まったラケットを試打した感想を書いていきます。
[攻撃技術全般(ドライブ・スマッシュなど)]
カーボンラケットなので弾みは強いです。
しかしただ単に弾みが強いだけではなく面のどこに当たってもボールが勢いよく飛んでいきます。
弦楽器製法によるスイートスポットの広さによるものだと思われますが、当たりどころでボールの弾みが極端に落ちたりせず、加速力のあるボールを打てるので強気でラケットを振ることができます。
またアウターカーボンラケットの中ではやや薄めの5.5mmの板厚でありながらかなり弾むので、軽さやしなりも合わさってより弾んでいる感覚を覚えます。
また打球感はかなりハードで打った感覚がハッキリと手に伝わってきます。
ディグニクス05やラザンターR48を貼った場合、弾離れが速いと感じました。
シュラガーやゲルゲリーαなどのガチガチのカーボンラケットよりは弾を掴む感覚はあるものの、アリレートカーボンやインナー特殊素材と比較するとやはり弾離れが速く初速の速いボールになりました。
ディグニクス09とアイビス、ブルーグリップC1を貼った場合、スポンジが硬いためより弾離れが速くなりボールを弾くような打球になります。
擦り上げるドライブは回転はかかるものの弾離れが速いため木材やインナー特殊素材ラケットに比べると弧線がゆるやかな弾道になります。
面をフラットに開いたミートドライブでは回転量の多さにラケットで弾いた速さが加わるためピッチの速いドライブの連打が可能になります。
伊藤美誠カーボンは擦りとミートであればミートが適したラケットだと思います。
05やR48などのスピン系テンションであれば食い込みの良さを活かしてミートドライブでピッチの速さで攻める、09CやC1などの粘着テンションでは硬いスポンジの弾くミートと擦り上げるループによる緩急の大きさで相手を崩す、いずれの組み合わせも伊藤美誠カーボンの弾離れの良さを活かせる戦術が適していると感じました。
またバックドライブではC1や09Cなどの粘着性ラバーだとスポンジが硬い上に伊藤美誠カーボンも弾離れが速いのでボールを弾いてしまいます。
ディグニクス05やラザンターR48を貼っても硬く感じることはありますが比較的食い込ませやすいので、回転量が多く安定したバックドライブを打ちやすいです。
しかしこのバックの弾く感覚はインパーシャルXBなどの表ソフトを貼った場合には理想的な弾道を生み出します。
スイートスポットが広いので素早いラリーの中でもスピードの速いボールを素早いピッチで連打することが可能です。
またタテ目の表ソフトと組み合わせた場合、揺れるナックルボールを容易に打つことが出きるので不規則な弾道で相手を翻弄することが可能です。
普段あまり表ソフトを使うことが少ない私でもナックルを量産することが出来たので、表ソフト速攻型の方が使えばより鋭い角度で強力なナックルを打つことが出きると思います。
また表ソフトでのスマッシュは非常にスピードが速く相手の台にバウンドした後も大きくボールが伸びていくので伊藤美誠カーボンの最も強力な武器の1つだと思います。
バックに裏ソフトを貼って弾離れの速いなかで回転をかけてバックドライブを打つよりも、表ソフトを貼って爆速スマッシュや揺れるナックル、ピッチの速いラリーで攻める方が得意なラケットだと感じました。
伊藤選手がバック表ソフトのプレーを中心にアコースティックカーボンを選んだのかどうかは存じ上げていませんが、表ソフトが本職ではない私が打っても表との相性が抜群だと感じました。
バック表ソフトや裏ソフトでも素早く弾くプレーが中心の速攻型の選手におすすめだと思います。
[守備技術全般(ブロック・ツッツキ・カットなど)]
アウターカーボンなのでブロックの際にある程度弾んでしまうことは覚悟していました。
木材ラケットやインナー特殊素材ラケットと比較すると確かに弾みやすく、ブロック後にあらぬ方向へ飛んでしまいオーバーしてしまうリスクは高いです。
しかしスイートスポットが広いので、ラケット面のどこで相手の強打を捉えても同程度の弾みで素早く返球できる為、安定感のあるブロックを繰り出すことができます。
相手の強打を捉えた面の部分によって極端に弾んだり弾まなかったりという調整が難しい方や苦手な方には伊藤美誠カーボンのブロックはむしろやり易く感じる場合もあると思います。
また表ソフトの場合はそこに不規則なナックルが加わるので、ナックルブロックで崩してラリーの主導権を奪うことも可能です。
表ソフトとの組み合わせではスイートスポットが広く弾離れが速いことをブロックにも活かすことができます。
ツッツキは回転をかけることは可能ですが角度の調節がかなりシビアで、面の開き具合を少しでも見誤ると浮いたボールになってしまいます。
ストップは以外と止めやすくダブルストップなどもできますが、ツッツキ対ツッツキの場面では安定性の面でやや不利になる場面がありました。
また伊藤美誠カーボンは速攻型に向いたラケット用なので、カットにはあまり向いていません。
しかし同じ弦楽器シリーズのビオンセロはカットの安定性と切りやすさ、攻撃に転じた際のボールの威力が絶妙なラケットなのでカットマンの方には伊藤美誠カーボンやアコースティックカーボンではなくビオンセロを手にとって頂きたいと思います。
同じ弦楽器製法のラケットでも速攻やカットなど戦型にあったモデルを選べるニッタクのラインナップの厚さ改めて驚かされました。
[サーブ・レシーブ・台上技術]
サーブではスピン系の切るサービスが以外にもやりやすく、放たれたボールの回転量も多いです。
アウターカーボンラケットは重く弾みが強いためサーブの安定性を欠いたり、複雑なモーションの際に手首が使いにくかったりするのですが、伊藤美誠カーボンは切る際のボールタッチがソフトで球が暴れにくいので回転がかけやすいです。
レシーブでは弾持ちがあまり良くないので、相手の回転の影響を受け過ぎる前に弾き返すことが可能です
しかし弾きすぎると浮いたレシーブになる為、相手サーブの回転よりもこちらのレシーブでの前後左右の調節に神経を使います。
台上でのチキータは弾離れが速いので食い込みの良いラバーでないとそもそも回転をかけることが難しいです。
今回試打した中ではラザンターR48がもっとも食い込みが良くチキータの安定性が高かったですが、テナジー64FXやラザンターR42などのよりソフトなラバーとの組み合わせの方がチキータはやりやすいと思います。
またシェークバック粒が本職の方に伊藤美誠カーボンを使ってもらった際に、バック表ソフトでのコンパクトな台上バックでの鋭い角度で素早いボールの威力が凄まじく、得点される場面が多かったです。
私のような草の根プレーヤーでも、世界最強のバック表の伊藤選手にアコースティックカーボンや伊藤美誠カーボンが選ばれる理由を垣間見たような気持ちになりました。
[おすすめな方]
弾持ちがよいラケットでギュインギュインと回転をかけるドライブマンにはもっと適したラケットがあると思います。
伊藤美誠カーボンはスイートスポットが広くて面のどこでボールをインパクトしてもスピードのあるボールを打つことができます。
また弾く感覚が強いラケットなので素早いテンポの連打で相手を崩す両ハンド速攻型の選手におすすめです。
特にバック表ソフトでの初速の速いボールや、不規則な弾道のナックルブロック、小さなスイングでも鋭い角度のボールを打ち込める点や相手のサーブの回転の影響を受けにくい点など、もっと使い込めば使い込むほどメリットが見つかると思います。
アコースティックカーボンは速攻用ラケットとして最適なスペックを誇るラケットだと思います。
伊藤美誠選手に憧れるレディースやジュニアの選手のみならず、速さ命の両ハンド速攻型の方にもおすすめです。
[まとめ]
久しぶりの弦楽器シリーズの試打でしたが、ラインナップを通して高いスペックを誇る製造技術の高さはさすがだと思いました。
選手の名を冠したモデルの発売により元より高かった注目度がさらに高まると思います。
ニッタクのロングセラーは伊達じゃないと思わされた楽しい試打でした。