
投稿者:働くカットマン
[自己紹介]
卓球歴はラケットを握っていない期間等も含めて20年超。
強さは、オープン戦で3〜4つぐらいのランク別に分かれている大会の場合、上から2番目のランクで出ると確実に顰蹙を買う程度。
一番上のランクではそこそこ目立つけど、その大会のトッププレイヤーと当たるとゴミクズのように蹂躙される程度です。
[レビューする商品名]
バーティカル20 (VERTICAL20)/特薄(0.3mm〜0.6mm)/STIGA/黒
[使用環境]
ラケット:ビオンセロ (特注グリップ/ニッタク)
F面:ラクザXソフト (MAX/ヤサカ/赤)
B面:バーティカル20 (特薄/STIGA/黒)
全重量:164g
[はじめに]
【使用動機・目的】
一番心動いたキッカケは、「張本選手と全日本で激競りした、国内最強カットマンの御内選手が現在使用しているラバーだと聞いたから」というかなり不純な動機です。笑
御内選手コメントでは、
■低弾性で非常にゆっくりカットが飛ぶ
■安定する
という触れ込みでした。同時に、
■遅いカットは持ち上げるのにパワーが必要
■カットが遅ければこちらの時間的余裕もあって次のボールも拾いやすい
という話もあり、そりゃそうやわ…と感じていました。
実際、自分自身がカットマンとして上達するには、もう少し守備寄りで行くべきだと思っていたところで、違うラバーを試すにはちょうど良いなとも思いました。
このラバーを試す前に使用していたのは、Dr.NeubauerのNo.1。6年以上使い続けているラバーで、性能も高くてバランスも良く…何も不満はありませんでしたが、唯一ちょっと高いというところがネックでした。笑
より低弾性であるなら、別のものを試すのも良いだろう…と判断して、今回の購入に至りました。
スポンジ硬度で柔らかい20と硬い55とがあるのですが、もちろん御内選手リスペクトの僕は、20の特薄を選択です。
結論として、継続使用する判断に至りました。
【ラバー重量】
貼付時の重量で20g
直前のNo.1(0.6mm)の重量は26gです。
貼付時重量はモノによって22g〜26gぐらいの幅がありましたが、バーティカル20特薄はさらにその幅を下回る20g。
1枚目なので個体差かどうかは分かりませんが、一気に軽くなったため、最初は重量だけ違和感があり、不安でした。
【粒形状やらのウンチク】
粒は縦目配置です。(個人的には、縦目だとか横目だとかって消費者が気にしても仕方ないと思います。)
No.1と比べて、粒密度は同じぐらいですが直径が少しだけバーティカル20の方が太い気がします。
スポンジ硬度はバーティカル20という名称が表す通り20度らしいです。ヨーロッパ硬度っぽいので、まぁ参考にしかなりませんが、触った感触、フェイントロング3やNo.1のスポンジと同程度の硬度か、さらにそれを下回るぐらいの硬度だと思います。
粒表面には網目あり。触ると引っ掛かりが良さそうです。あと、スポンジもそうですが粒自体もかなり柔らかく、倒れやすいです。
敢えて固めに設計されているフェイントロング3とは比べ物にならないですし、No.1と比べてももう少し柔らかいです。
柔らかいということは物質的に密度が小さいものが多いので、まぁ重量が軽くなるのも納得かもです。
【打球感】
めっちゃ柔らかいです。触り心地のまんまです。
あと、少し掌の中で籠る感覚があります。
僕はこの籠る感じの打球感、掌に直接インパクトが伝わってくる感じで、コントロールしやすく感じて好きです。
【球持ち】
非常に球持ちが良いです。
ロング3と比べたら圧倒的に、
No.1と比べてももう少しだけ球持ちが良いですね。
おそらく粒もスポンジも柔らかいからだと思います。
僕はNo.1の使用歴が長いため、全く違和感はありませんでしたが、ロング3のような粒の固いラバーを使用している人が乗り換えようとすると、最初はかなり違和感が大きいだろうと思います。
この球持ちの良さは、強インパクトはもちろん、弱インパクト時も感じます。
【弾み】
ロング3やNo.1より、さらに低弾性です。
弱い球に対しても、強打に対しても同様の低弾性で、想定外のあらぬ方向にぶっ飛んでいく…という感覚には一切なりません。
最初は球足が短くなりがちでしたが、すぐ慣れました。
[攻撃技術全般(ドライブ・スマッシュなど)]
【バックプッシュ、バックハンド強打】
非常にやりやすいです。
粒が柔らかいので、球を持って入れにいくことができます。
副次的効果ですが、粒高の中でも軽い方なので、ラケット重量が軽くなり、その点でもやり易さに繋がっています。
ボールコントロールが容易です。
これで入らない、コントロールできないとなれば、もう腕の問題です。
粒を立てる、立てないの使い分けも既に感覚があるなら、普通にできると思います。
低弾性なので自分からそこまでの威力は出せませんが、相手のボールの威力を借りればそこそこの良いカウンターブロックが出ますし、表より球がキショイのでやり辛さはかなりあると思います。
戦術幅が広がるラバーだと思います。
【ドライブ】
どれ程の需要があるかは分かりませんが、一応ドライブを打ってみました。
粒高の中ではかかる方だとは思いますが、低弾性なので非常に難しいです。笑
このラバーを使う人にとっては最初から求めていない技術ではないでしょうか…
[守備技術全般(ブロック・ツッツキ・カットなど)]
【カット】
■対強ドライブ・ループドライブ
ブチ切れます。
全く問題ないです。
これで切れん人は腕の問題です。
No.1と同じか、それ以上に切れます。
おそらく、低弾性なので思いっきり切りにいけるからですね。
元々No.1を使い続けていたので、反転効果が高いものに慣れてましたが、反転効果単体の性能面では同等の感覚です。
プラスして低弾性による自力回転でさらに上乗せってイメージですね。
■対乗せ打ち、ナックル系
切れます。
もちろん自分から切る技量は必要ですが、No.1よりもやり易く感じます。
粒・スポンジともに柔らかいからでしょうね。
非常に自在性が高いです。
■安定感
バカ高いです。
安定感が売りのロング3より安定するんじゃないでしょうか?
ロング3よりさらに低弾性ですし、柔らかいのでコントロール性能も非常に高いです。
特筆すべきは、大きく動かされて体勢が少し崩れている時の、ほぼ前腕だけでスイングする咄嗟のバックカットです。
通常ならインパクトの強さを確保できず、特にプラボールになってからはコントロールが非常に難しくなってしまいましたが、バーティカル20はその柔らかさのお陰か、めちゃくちゃコントロールしやすいです。
咄嗟のバックカットで1本粘れる(しかも低弾性なので質の良いカットが飛ぶ)というのは、非常に大きな利点です。
実際、これが入るか入らないかで勝負所の点数や、試合の流れを変える1本になったりします。
この点で、乗換後すぐに用具への信頼度が非常に高まりました。
■ナックルカット
僕の技量では、切れたボールに対してナックルカットは出ません。笑
回転が弱くスピードも遅いボールに対してはナックルを出せます。まぁそれは当然ですね。
■弾道
極めてイメージ通り、コントロールしやすい粒高と共通したふっつーーーの弾道で飛んでいきます。
低弾性な分、ゆっくり山なりに飛ばすことが可能ですし、インパクトを強く厚く当てれば、高い打点からの突き刺す系カットも可能です。
イメージ通りの自在性がウリだと思います。
【ツッツキ】
■対下回転
ちゃんと切れます。
さらに、ナックルもしっかり出ます。
自在性が非常に高いです。
ただしナックルを出すことに関しては、最初ちょっと慣れが必要でした。
粒が柔らか過ぎてすぐ倒れてしまい、粒で押し出そうとしてもちょっとかかってしまい、ドナックルを出すのが難しかったです。
しかしこれは慣れの問題で、元々感覚がある人ならちょっと使えばすぐできると思います。
■対ナックル
No.1より自分から切りやすいです。
No.1だと、ナックルに対してしっかり切るにはかなりのスイングスピードが必要でしたが、バーティカル20は低弾性に任せて思い切って振ることができるので、切りやすく感じます。
自分から切ることについては、ロング3の方が自在性が高くやり易いと思いますが、それでも、非常に自分から切りやすい部類の粒高だと思います。
【ブロック】
なんでもでるラバーです。
No.1を使った時の感想と一緒です。
上回転で返すこともできるし、プッシュ性やいわゆる粒高っぽいキショイ系のナックルブロックもできます。
ただただ「低弾性になったNo.1」という感覚です。
最初は弾まない分、ネットミスがありましたがすぐに慣れました。
カットマンだけでなく、前陣攻守型の人にも使えるラバーなんではないかなと思います。
いわゆる「変化形表ラバー」と「粒高」の中間的な使いやすさで、僕は粒高に自在性を求めているので、ここはドハマりします。
球持ちが良いため、コントロールもしやすいです。
カット性ブロックもできます。ペン粒が本職の人で、守備寄りの人ならアリなんでは無いでしょうか。
[サーブ・レシーブ・台上技術]
【ストップ】
低弾性でコントロールの良いラバー。
そして粒高なので回転の影響も少ない。
そのため、粒高の中では間違いなく非常にやり易い方だと思います。
【サーブ】
思いっきり切ってバックサーブ振ると、ちょうど2バウンドするフォア前サーブが出ます。笑
そんなにかかってないですが、それが良いかも知れませんね。
レシーブは粒高・低弾性・コントロール◎なので、全体的になんでもできます。
これを使っててレシーブが上手くできない場合、それは使用者の腕の問題です。
長く卓球を続けるつもりなら、尖った性能の妙なラバーに頼るより、克服できるよう練習した方が確実に良いですよ。
[おすすめな方]
特にやり辛いと感じる技術がなく、全ての技術において安定感と自在性が備わっているため、守備重視のオールラウンドプレイヤー向きです。
総合力めっちゃ高いです。
そりゃ御内選手も使いますわ!!
カットマンには、攻撃・守備・変化のうち、守備と変化を重視するプレイヤー向けだと思います。
バック粒の前陣攻守型の人にも合うと思います。
自分で切る・切らないの変化をつけられない人だと、性能を引き出し切れないと思いますが、粒が柔らかいので、「粒を倒して切る」という粒高の基本感覚を身につけるのにも、ちょうど良いラバーかも知れません。
[まとめ]
全てのコート領域でのバックハンド技術がやりやすく、自在性が高く安定性のあるラバーだと感じます。
No.1は戦術の幅を広げてくれましたが、選択肢の多さはそのままに、低弾性になって安定性が増した感覚があります。
まぁ平たく言って、少し弾みを抑えたNo.1です。
個人的には、もっと守備に比重を寄せたかったので、完全に求めていたものと合致しました。
No.1も非常に良いラバーでしたが、バーティカル20に乗換決定です。安いし…。
[補足]
【フォア面への影響】
低弾性スポンジの影響を受けてか、フォアの威力が落ちます。笑
個人的には、ドライブの威力が落ちても、ドライブ自体元々ブチ抜くような使い方はしていませんし、むしろ同レベル帯のドライブマンのドライブと差別化できるので、イイ感じに作用します。
しっかりボールが台に入ってくれます。
ただ、フォア面で攻撃を多用する人にとっては、よろしくないかも知れません。
また、ラバー重量の副次的効果として、軽くなってラケット全体が軽量化されたので、切替がやり易くなり、バックだけでなくフォアの安定性も上がった気がします。笑
ラケットコントロールがし易いですね。
「軽量になったため、強打に対してラケットを押される」…という感覚は、特にありません。
【フェイントロング3、No.1との比較総括】
どちらも6年超使ってましたので、簡単にまとめます。
■対ループの切れ味
バーティカル20 ≧ No.1 >> ロング3
低弾性な分、自分から切りにいけるのでバーティカルに軍配が上がります。さらにおっそいカットになるので、相手としてはボールの勢いを利用することができず、同じ回転量でも重たいカットになってます。
■対ナックルの切れ味
ロング3 ≧ バーティカル20 > No.1
特にナックルに対する自在性部分ではロング3に軍配が上がりますが、それでも非常に高いバランスで自分から切りにいくことが可能です。
■対下回転への切れ味
ロング3 = バーティカル20 ≧ No.1
最高ランクだと思います。
■カットの安定性
バーティカル20 > ロング3 > No.1
低弾性起因で、明らかにバーティカル20の方が安定します。ロング3超えの感があります。
No.1自体も非常に安定していますが、コントロール系粒高の中でも随一だと思われます。
■ツッツキの安定性
バーティカル20 ≧ ロング3 ≧(=) No.1
これはひとえに低弾性起因です。
■ブロック、プッシュ、バックハンド強打の安定感
バーティカル20 > No.1 >>> ロング3
異常になんでもやり易いNo.1より低弾性で、かつやり易さが同等レベルなので、安定感で言えばバーティカル20が上回ります。
(ロング3も色々できるラバーです)
【最後に】
「総合力の高い何でもできる系ラバー」で、似た性能の代表格はロング3とカールp4。
No.1は総合値が一緒かもう少し上だと感じていましたが、値段が高い。笑
同じ総合値で低弾性のために安定感が増したのが、バーティカル20というイメージです。
用具沼にハマってしまってすぐラバーを変えたくなる人に、是非このラバーを使ってもらいたいです。
「このラバーで出来ない技術があったら、それは自分の腕の問題」を強く体感できるラバーです。
値段も定番系粒高ラバーと同価格帯で非常に安いため、神ラバーです。。。