投稿者：ぬりかべ
１．ざくっとレビュー
守備力と安定感のレベルが高く、「回転をかけやすい」「スピードを出しやすい」うえに粘着ラバーの打ち方でもテンションラバーの打ち方でも使える、扱いやすさが抜群の「ちょうどいい」万能型裏ソフトラバー。
２．第一印象
最近増えた金色のパッケージでしっかり密封されており、いかにも品質が高そうに感じます。シートは透明感がない赤で、粒はアポロ5と比べると細く高いように見えます。スポンジは気泡が小さいタイプで、硬さは中国ラバーとしては標準的。スポンジ面には39とプリントされています。玉突きをすると、中国ラバーとしては柔らかく、テンションに近い弾みがあるように思いました。
重量は、ラティカに貼って４９ｇ。中国製の粘着テンションとしては標準的な重さですね。
３．攻撃技術
ドライブ 8.5点
スマッシュ 8点
カウンター 9点
ドライブは、中国ラバーとしては打球感が柔らかく、軽い力でもボールが良く食い込み、硬めの粘着にありがちな「打ちそこない」はなく、パワーが無くても安定して前進回転がかかります。スピードは「粘着ラバーとしては速め」「テンション系としてはやや遅め」、回転量は「テンション系よりかかる」「粘着ラバーとしてはやや少なめ」という感じです。フルスウィング時の回転量はアポロ５や木星ブルーに、スピードは（先日試打した）MX-Dには劣りますが、６０〜８０％程度の力で打ったボールの回転・スピードは共に良好。一発の威力はやや少ないものの、台に収まる安定感と連打性能、フルスウィングできないときのボールの質は高いと感じました。
スマッシュでは、打球感が柔らかいぶん、カチカチの粘着性テンションと比べると飛ばしやすく打ち損じも少ないものの、ドライブの印象ほどには飛びません。初めは「安定感はあるけど決定力はいまいちかなぁ」と思っていたのですが、練習相手がブロックを何度もネットにかけているので話を聞いてみたところ、球質がナックルになっているようです。柔らかいラバーはオートマチックに前進回転がかかるラバーが多いので、これはちょっと意外でした。スマッシュとドライブを使い分けられる選手が使うと、決定力はかなり高くなるかと思います。
カウンターでは、さほどスウィングスピードがなくても、食い込みの良さ＋シートの摩擦力でオートマチックに前進回転がかかって返ってくれるので、安定感はかなり高め。威力の最大値はアポロ5やMX-Dに劣りますが、「小さいスウィングでも前進回転をかけやすい」「弾みすぎないので台に収まる」ため、まずまずの威力のボールがコンスタントに入るように感じました。
４．守備技術寸評
ツッツキ 9点
ブロック 9.5点
守備技術で特に良かったのはツッツキ。とにかく「浮かない」「飛ばない」と、粘着性ラバーらしさが前面に出ています。そのため、強く切っても浮いたりオーバーしたりする心配がありません。さらに、なぜか相手のボールの回転量に鈍感であり、こちらが一定の角度を維持していれば安定して低く返ります。アポロ５超極薄のような異常な切れはありませんが、「切る」「切らない」のメリハリがつけやすく、ツッツキで点を取ることもチャンスメイクも可能です。
ブロックの感触もかなり良好です。弾みはテンション系より抑え気味になり、さらに粘着性のように硬さの影響でボールが落ちることがありません。当てるだけでは相手の回転の影響を強く受けてオーバーしやすいのですが、テンション系のように当てる時にちょっとラケットをかぶせると前進回転がオートマチックにかかり、安定した返球ができます。また、表面の粘着を生かしてナックル性・カット性のブロックも可能。ブロックでは、テンション系と粘着性の良さのどちらも持っているように感じました。
５．台上技術・サーブ・レシーブ全般
レシーブ 9点
台上技術 9点
サーブ 8.5点
レシーブでは、弾みがテンション系よりも抑え気味になるので、４５°ツッツキやフリックで回転の上書をすると安定して返ります。また、不思議と角度をあわせるレシーブでは回転の影響が他の粘着ラバーよりも受けにくく、とっさに当てるだけのレシーブも他のテンション系や粘着系と比べて台に収まりやすいように感じました。
台上技術では、先述したように弾みが抑え気味になるので攻撃の威力は高くありませんが、小さい力でも回転をかけやすいため、チキータや台上ドライブ、フリックが安定して入ります。ストップは粘着らしく短く止まるので、ストップと台上攻撃のコンビネーションは大きな武器になるかと思います。
サーブでは、弾みが抑えられるのでショートサーブをコントロールしやすく、弾道も低め。回転量はノーマル粘着と比べるとやや少ないように感じます。弾みが抑えられるとは言っても、このラバーはボールを食い込ませやすいため、ノーマルなテンションと比べるとスピードはやや抑え気味ですが、ロングサーブの威力は十分に出ます。回転やスピードだけを見ると飛びぬけたものがあるわけではありませんが、「ショートサーブのコントロールが良いわりに、ロングサーブの威力が出る」「回転量もスピードも出しやすい」と多くの要素について高いレベルでバランスが取れています。回転量やスピードで相手を圧倒するタイプより、長短や回転量の変化でチャンスを作るタイプに向いているように思います。
６．お勧め構成
安定感が高いものの、威力にはちょっと物足りなさがあるので、特殊素材系が合うように思います。威力を補うのであればアウター系、安定感をキープしつつ威力をプラスするのであればインナー系が良いかと思います。
基本的にはバック向きのラバーかと思いますが、一般の攻撃選手であれば両面このラバーでいいのではないかと思います。とは言えラバーがやや重めなので、ハードヒッターが使うには特に問題はないと思いますが、中学生や女子選手が使うのであれば、ラケットは軽めのものを選ぶと良いでしょう。
７．どんな人にお勧めか
群を抜いた返球のしやすさ＆攻撃の安定感を考えると、扱いにくさを技術力でカバーできるトップクラスの選手以外には、ぜひこのラバーを使ってほしいですね。また、トップクラスでもバックに守備力や返球しやすさを求める選手には満足して使ってもらえると思います。
８．総合評価
先述した通り、一般的なレベルの攻撃選手にジャストフィットしたラバーかと思います。特に安定感が重要になる中学レベル（県大会出場ぐらいまで）であれば、９点をつけて良いでしょう。高校生や一般の選手でも県のトップレベルまでいかないレベルであれば、8.5〜９点をつけて良いかと思います。
ペン粒が使うのであれば、反転や裏面打法を多用するタイプであれば8.5〜９点、私のような「裏ソフトはサーブだけ」というタイプには、サーブの回転量がちょっと物足りないこととラバーの重さがあることをマイナスし、8点前後というところでしょうか。
そして、このラバーの大きなメリットは「安い」ということ。コストパフォーマンスの高さはこれまでに使ってきた裏ソフトラバーの中でトップクラスと言って差し支えありません。その部分を加味すれば、+0.5してよいように思います。
９．その他
コロナがちょっと落ち着いてきたので、練習試合や技術講習会に行く機会が増えたのですが、中学生（特に男子）のラケットやラバーを見ると、明らかに技術レベルにあっていない高価格帯のものを使っている選手の多いこと多いこと…。そのせいか、威力のあるボールを打つことはできても安定感がなく、自滅する選手がかなり多くいます。そんな選手には、ぜひ月ブルーを使ってもらいたいものですね。「中学生（と大半の高校生）は両面これでええやん。」というのが正直なところです。
