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投稿者:ぬりかべ

[自己紹介]
  卓球歴38年 粒高歴35年・中ペン歴35年
  選手として大した実績はありません。最近の卓球は、試打と指導がメインです。

[レビューする商品名]
  Wizard株式会社 天衣無縫中国式

[使用環境]
  ※ブレードとグリップの形状を、STIGAのPAC(グリップの細い中国式)の形に加工していただきました。
  ※表面:GrassDtecsGS(黒・OX)、裏面:キョウヒョウIIIターボオレンジ(黒・中)
  ※初めからラケットにコーティングが施されているため、自分ではニスの塗布は行いませんでした。

[はじめに]
  ラケット重量はなんと77g。9枚合板としては驚異的な軽さでしょう(この重量でも「特別に軽い方」ではないようです)。板厚は5.8mmと、こちらも9枚合板としては驚きの薄さ。厚さは均質ではなく、中から外に向けてだんだん板が薄くなっています。メーカーさんの説明では、中から外に行くにしたがって板が軟らかくなっているそうです。
   素振りをしてみると、重心は先端寄り。これは、グリップを補足していただいた影響でしょうね。球突きをすると「カン」と高い音が鳴り、粒でも裏でもよく弾みます。打球感は、9枚合板らしく硬めでした。

  ※技術によっては粒のみ、裏のみ、粒裏両方で試打しています。

[攻撃技術全般(ドライブ・スマッシュなど)]
  プッシュ 9点(粒)
  ドライブ 9点(裏) 9.5点(粒)
  スマッシュ 9点(裏) 8.5点
   このラケットの最大の特徴は、弾く技術とかける技術では打球感と飛び方が大きく異なる、ということ。フラット系の技術では9枚合板らしく球離れが早く、硬い打球感とともにかなり直線的にボールがとびますが、ドライブで回転をかけに行くとガッチリとボールを掴み、回転量の多いボール出すことができます。
   まずプッシュ(粒)では、球突きの印象そのままに直線的で速いボールがとびます。弾道自体は揺れたり曲がったりしないので素直な飛び方ですが、とにかくスピードがあるので決定力は高めです。一般的な木材合板ラケットよりもはるかにとぶので、バウンドの頂点から下に押すように打たないとオーバーミスが出やすいでしょう。私は安定してボールを入れるためにちょっと前進回転をかけて打ちましたが、それでも十分なスピードが出て他のラケットよりも決定力が高いと思いました。
   ドライブ(裏)では、フォア(表面)、バック(裏面)どちらで打っても最初はオーバーミス連発でした。ただし、これは「飛びすぎる」という感じではなく、「ボールをガッチリ掴みすぎてオーバーする」という感じであり、制御ができない感じではありません。対上回転・した回転とも、インパクトの場所をボールのやや上側(時計の1〜2時のあたり)にすると、回転量が多くスピードのあるボールが安定して入りました。ボールの真後ろを上方向にスイングするとスピードは今一つですが、ドライブで緩急をつけるにはちょうど良いように思います。そして…びっくりするほど良かったのが粒でのドライブ。裏ソフトと同様にボールのやや上側を打つと、(高くはありませんが)弧線を描いてスピードのあるボールが安定して入ります。粒のドライブというと多くの場合はつなぎのボールで使われると思いますが、このラケットで打ったドライブはスピード系表ソフトで打ったようなスピード・弾道となり、決定球にもなりうるボールだと思いました。
   スマッシュは、プッシュと同様に球離れがかなり早く、スピードがかなり出るので相手に時間の余裕を与えません。決定力はかなり高めといってよいでしょう。ただし、球離れの早さに慣れるまではオーバーミスが出やすいかと思います(2〜3時間も練習すればなれるでしょう)。粒でスマッシュすれば、超高速ナックルになるのでとんでもない威力になるのでは…と思いましたが、高速ナックルはコントロールがちょっと難しいですね。威力は十分に出るのですが安定感は今一つでした。肩の高さぐらいのチャンスボールはフラットに叩き、胸の高さぐらいならドライブとスマッシュの中間ぐらいの感じで前進回転をかけて打つと良いかと思います。

[守備技術全般(ブロック・ツッツキ・カットなど)]
  ブロック 8.5点(裏・粒とも)
  ツッツキ 7点(裏)
  カウンター 8.5点(裏)
   守備技術全般で言えることですが、攻撃の威力はオフェンシブのブレードとして高めであるにもかかわらず、守備技術では弾みがオールラウンドぐらいに感じるほどに、やりやすさを感じました。
   まず良かったのがブロック。粒での当てるだけのブロックではボールの飛び出しが良く、オーバーミスが多くなるように感じました。しかし、カットブロックでは思いのほか弾まず、かつ粒が良く倒れるので切れたブロックが安定して台におさまりました。カットブロックの切れは「まぁまぁ良い方」ぐらいですが、かわりに「切らない」ブロックがやりやすく、「切る・切らない」の回転量の変化が多いと感じました。また、一般的な守備用ブレードと比べてブロックのスピードがあるため、相手からすると「いつものボールより切れているか・切れてないかどうかがわかりにくい」「思いのほかスピードがあるので時間的余裕がなくなる」とかなりやりづらかったようです。裏ソフトでのブロックでは「相手に押される」感じがなく、ボールのちょっと上を捉えればオートマチックに前進回転がかかり、安定して台におさまります(カウンター気味に強く押しても自然と台におさまりました)。粒のブロックと裏面での裏ソフトでのブロックを混ぜると、球質の変化+スピードで相手をかなり幻惑できそうですね。なお、裏ソフトでも普通に当てるだけではオーバーミスが増え、若干ボールが高く返るように感じました。粒にしても裏にしても、このラケットでブロックを安定させるには、ある程度の技術力が必要であると思います。ツッツキでは、切れは標準的であるように感じましたが、相手のボールの回転量に鈍感であり、安定感は上々。長短のコントロールもやりやすいように感じました。スピードのあるツッツキもやりやすく、ツッツキで粘りながら、時折速いツッツキを混ぜて相手を詰まらせる、というプレーに適しているように思います。
   カウンターは、先述したように「相手ボールの威力に押されない」「オートマチックに前進回転がかかる」ので安定感が高く、弾みも良いので威力も上々。多少タイミングがずれても「ボールの上を捉える」ができれば質の高いカウンターが入ります。個人的には、中後陣でフルスウィングのカウンターを打つより、小さいスウィングでバウンド直後を捉えて相手の時間を奪うカウンターがこのラケットにあうように思います。

[サーブ・レシーブ・台上技術]
  サーブ 8.5点(裏)
  レシーブ 8点(粒・裏) 
  台上技術 8.5点(裏)
   サーブに関しては「弾むからショートサーブが難しいのではないか」と思いましたが、ボールの下側をこすると思いのほか弾まず、下系のショートサーブは回転・コントロールともに好感触でした。ロングサーブでは、攻撃のところで述べたように「ラケットがボールをがっちりつかむ」ので、横回転・横上および横下回転ともに回転・スピードともに良好。初めは飛びすぎてオーバーミスを連発してしまいましたが、これは10分ほどサーブ練習をすれば慣れる範囲でした。
  レシーブに関しては、普通にプッシュで弾こうとするとボールが飛びすぎてしまい、コントロールが難しいと感じました。プッシュのところで述べたように、バウンドの直後よりも頂点を押すようにしたほうが安定するでしょう。あるいは、ラケットを横にスライドさせてボールの勢いを殺したり、フリックでちょっと回転をかけたりすると安定して返ります。レシーブ全般が粒としてはスピードがあるので、相手の時間的余裕を奪うには十分なのですが、意表を突かれて「とっさ」にラケットを出した時のコントロールが少々シビアであるように思います。
   台上技術(裏)では、フリックやチキータでは「つかむ」感じが出て回転をかけやすく、安定して入れることができました。威力もまずまず。また、サーブの時のように、ボールの下側をこするときは弾みがかなり抑えられるため、ストップも短く低く止まります。

[おすすめな方]
   粒も粘着も使いやすかったので、貼るラバーは選ばないのではないかと思います。回転系テンションや表ソフトも問題なく使えるでしょう。フラットに打った時の球離れの早さを考慮すると、変化系やスピード系の表ソフトとは特に相性が良いかもしれません。粒高は、柔らかくて自然と倒れる粒を使うよりも、硬い粒を貼って「切る・切らない」の変化をつけるほうが良いと思います。
   粘着でも十分なスピードが出ることと、ラケット自体が軽いことを考えると、両面に粘着テンションを貼る、というのも面白いかと思います。

[まとめ]
   ペン粒であれば、止め専なら8.5点、攻撃を多用する選手なら9〜9.5点をつけてよいかと思います。シェーク異質型も9〜9.5点というところでしょうか。
   シェーク裏裏の選手なら、ドライブメインでの選手なら8〜8.5点、ドライブとスマッシュを打ち分ける選手なら9点をつけてよいラケットだと思います。

[補足]
   以前から「9枚合板に粒高を貼ってみたい!」と考えてはいたのですが、そもそも9枚合板のラケットが少なく、あっても90g前後と自分には重くて断念していたので、このラケットの存在(と軽量であること)を知った時にはめっちゃ喜びました。
   実際に使ってみると、おそらく攻撃選手向きラケットなのでしょうが、粒高が思ったよりもはるかに使いやすいことに心底驚きました。このラケットにアンチラバーや変化形表ソフトを貼ったらどうなるのか…考えるだけでワクワクします。とりあえず、いったん粒を変化形表に、裏ソフトを粘着から回転系テンションに、といろいろと試す予定です。