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■自己紹介

中ペン裏裏、大学体育会所属。新年あけましておめでとうございます。昨年は下半期通算の最優秀レビュワーに選出して頂きました。投票して頂いた皆様、記事をご覧になった皆様、本当にありがとうございました。昨年末の記事で告知した通り、今年は幅に富んだ商品をレビューしていくつもりなので、乞うご期待下さい!



■レビューする商品名

エボリューションMX-D 2.1mm



■使用環境

使用したラケット

インナーフォースレイヤーZLC-CS

オフチャロフトゥルーカーボン(アウターALC)


主にフォア面で使用しました。


■はじめに

メーカー説明文↓

世界で絶大な人気を誇るエボリューションの新作がいよいよ登場。威力と安定感を兼ね備えたMX-Pの使いやすさをそのままに、MX-Sの回転力が融合。トッププロも絶賛の超ハイブリッドラバーが2021年春にデビューです。(Tibhar公式HP)


「エボリューションMX-D(以下MX-D)はドイツのTibhar(ティバー)社から発売されているスピン系テンションラバーで、サムソノフ選手やスッチ選手など多くの契約選手が使用する「エボリューション」シリーズの最新作になります。ご存知の通り筆者はこのシリーズのファンであり、中学では「EL-P」、高校では「MX-P」をフォアラバーとして主に使用してきました。他にも田添響選手などが使用する、ハードインパクトで回転重視の方向けの「MX-S」などが展開されており、新作のD(ダイナミック)はこれまで販売されてきたP(パワー)S(スピン)の融合を売りにしているということで、期待が高まります。筆者がこのMX-Dを購入する前に見たいくつかのレビューでは「もはやPSは要らない」といった評価も散見され、実際に過去最高レベルのラバーに仕上がっているのかが気になるところです。


開封すると、エボリューションシリーズお馴染みの濃いレッドスポンジが姿を現します。PSより気泡がやや小さいところからも、これまでとの変化が感じ取れます。また、メーカー公表値のスポンジ硬度51.5度は数字を聞いただけで敬遠してしまいそうですが、シートが硬くないこともあって指で押したりしならせたりした段階では50度以上もあるようには感じられませんでした。

球突きではこれまでのドイツ製らしいピンと張ったような手に響く感触は無く、むしろ日本製のようなホールド感が若干あります。これはMX-Pにも見られる特徴で、シートが硬いSを除きエボリューションはドイツ製の中で比較的日本人が馴染みやすい打感であることを再確認しました。

重量は中国式ペンフォア面(161×150mmで間隔あり、実質シェークと同等程度の面積)でカット後48gでした。過去のエボリューションシリーズ同様、決して軽い部類のラバーとは言えません。


重量(ハイエンド系統)

テナジー05<Q5=ディグニクス05 <MX-D<MX-P=EL-S<ディグニクス09C



■攻撃技術全般(ドライブ・スマッシュなど)

0 基礎打ち、軽打

硬さの割にゴツゴツしておらず、悪く言えばハイエンドクラスなのに手応えがあまりないような大人しさがありました。スポンジまで食い込んで勝手に弧線を描き、飛距離は抑えめと、初中級者層に万人受けするであろう初打ちでの違和感のなさが印象に残りました。


1 ドライブ 8.5

軽打でも分かった通り、簡単に持ち上がってくれるので、ミドルや飛びつきでの処理で十分な体重移動ができなかった時も棒球になることが少なく、とにかくラリー力に長けています。ただ同時に、弧線が高くともオーバーミスよりネットミスが多かった印象もあります。決して引っかかりが弱くて落ちているわけではなく、ディグニクス05 やラクザXなどと比較してシートのテンションが弱いこともあってやや飛距離不足であることが原因です。テイストが日本製に近いために基本的に扱いやすく、筆者も信頼して公式戦で使用していましたが、綺麗で均一な球が浅く入ってしまうとプッシュブロックで押し込まれる展開も目立ち、大学社会人の男子では物足りなさもあるかと思います。

ドライブにおいて重要な項目は下回転打ちですが、これはMX-P同様シートの柔らかさによって深く持って時間を作るループが可能でした。更に元々の持ち上げやすさも相まって、浅さに気をつけつつも3球目5球目の戦術が立てやすかったです。スピードドライブも硬さを感じず食い込ませやすいために安定しており、破壊力には欠けますが積極的に前に振っていけるラバーだと感じました。

元々筆者がテナジーなどを使いつつも威力で劣るMX-Pに戻ってきた理由として、MX-Pの球持ちの良さとメリハリをつけられるところが挙げられます。ループは相手が確実に泳ぐような遅さで、強打時には深くまで入るような調整を、自ら操作している感覚とその性能値のバランスで満足がいったのはMX-Pくらいでした。MX-DPのバランスを損なわずに癖が取り除かれて特に対上回転でのミスが少なくなっており、中間硬度〜47.5度ユーザーにまず勧めたいのはMX-P愛用者としてもMX-Dの方だと断言します。


2 カウンター 7.5

弧線が高すぎるのとかけ返しではやや心許ないところもあり、食い込ませて自ら深く持っていく技術を必要とする点で厳しめの評価とさせて頂きました。腰負けはせず上級者の使用にも耐えるので、バックでのショートカウンターなどの方が適していると思います。


3 スマッシュ、フラット系 8.5

打感は爽快ですし安定していますが、個人的にはオートマのテイストが強くなったために叩いても弧線で回転量もそこそこある状態で相手コートに入るのがやや威力を弱めていると感じました。テナジーなら同様の状態でもより速さ、深さを求められるので問題にはならなかったのですが、MX-Dではミート主体では厳しいように思います。



■守備技術全般(ブロック・ツッツキ・カットなど)

1 ブロック 7.5

MX-Pにも見られますが、ややループ処理で薄く当てると敏感に反応して飛ばしたり滑ったりと心許ない部分もありました。収まりがいいのでカットブロックなど変化をつけるのも良し、食い込ませると安定した伸ばしブロックも良しと、フォアよりバック向きな印象を受けました(控えめな点数をつけた割に推す)


2 ツッツキ 8.0

ディグニクスやQ5のようにガツっと手に響くような切れ味はありませんが、暴発しづらいために低い軌道で差し込むより切って深く送る打ち方に合っていました。


3 カット

点数はつけませんが、球持ちとラリー重視の方には現状でかなりおすすめできるラバーです。



■サーブ・レシーブ・台上技術

1 サーブ 8.5

止めやすく、回転量も及第点といったところです。悪くいえばこれといった特徴は無いのですが、切って止められるというのは今日において実は不足している性能のように思います。


2 ストップ 9.0

止まる、切れる。とにかく安定しています。MX-Pも止まりますが、軽いタッチでかけ返してネットミスを誘えるのはMX-Dの方でしょう。


3 フリック 9.5

個人的な感覚になってしまいますが、ホールド感と引っかかりのバランスが絶妙で、これまでで2番目にフリックがやりやすいラバーだと思いました。1番はMX-Pで、これに更に強く引っ張る時の安定感がプラスされています。両者とも流しなど回転を残したタッチでも暴発することなく安定しており、総合的に良いです。


4 チキータ 9.0

持ち上がりが良く、小さなスイングでも自分の球にしてネットを超える安心感がありました。台上で自ら仕掛けにいく場面において硬さが生きています。改めてフォアだけでなくバックでの使用にも最適なバランスを感じます。



■おすすめな方

スポンジ硬度に似合わず、高校生以上が幅広く使えるラバーだと思います。今回は主にフォアで検証しましたが、ある程度技術がある方についてはバックでより強力な選択肢になるでしょう。昨今はドイツ製の日本製の境目が無くなってきており、このMX-Dに加えV20DNAプラチナXHなどはテナジーとの違いを求めつつMX-PやラクザXだといまいちドイツらしい癖が出過ぎると感じる方には打ってつけのように思います。


ラケットは散々述べてきた悪い意味での大人しさと中上級者層での飛距離不足を補うべくアウターカーボンとの組み合わせをおすすめします。スポンジは十分強いのでアウターと合わせても潰れることはなく、逆に硬すぎてインパクトが無いと棒球連発といった事象も、MX-Dに限っては起こらないのです。